《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.33 れろ

嬉野紬は、病院に著くなりどこかに駆け出した。

そう、駆け出した......。

タッタッタと、あっという間にいなくなってしまった。

そして僕はというと、一人病院で立ち盡くしている。

「.......は?」

いやいやいやいや、おかしいだろ。

僕は來たくもない病院に無理やり連れてこられ、挙句放置されている。

(もう、帰ってもいいんじゃないか?)

と思った瞬間、病院のアナウンスが流れた。

ーーそれは、僕を呼び出す容だった。

僕が呼び出され、指定された病室。

もう、來る必要のない場所の筈だったのに。

「......!!」

その時、僕は何か違和じた。

その違和が何かは分からない。だが、僕は今、何かと向き合おうとしている気がする。

「.......」

そして、僕は意を決し病室にった。

「よっ、親友。ちょっと話しようぜ」

「......奇遇だな、僕もお前に話があるんだ」

「おいおい、そんなとこ立ってないで、椅子にでも座れよ」

「あぁ.......」

僕は、神崎の言われるがまま、病室の椅子に腰かけた。

「嬉野はどこだ?」

「嬉野?さぁ、休日の子の行なんて、俺は知らないな。興味はあるがな!」

「神崎、出來ることなら、僕は君を疑いたくはない」

そう、疑いたくはないのは事実の筈だ。

僕が記憶をなくしてから、親友• •として接してきた年、神崎冬夜。

しかし、僕は彼について何も知らなかった。

そう、何もだ。

家も、家族も、友人関係も、好きなものも、嫌いなものも......。

その理由が、これとはな......。

「いつからだ• • • • •?」

「ん? あぁ、大五年くらい前かな」

「でも、どうやって• • • • •」

「それは、今の信義にはきっと分からないよ。それでも、信じるしかないんじゃないか? いや、信じるじゃないな」

れるだな」

「.......神崎、この前から、お前の行は不可解なことが多かった。それにも、何か理由があるのか?」

「理由.......?たまたまじゃないか?」

「......」

「まぁ、驚くのも無理はない。ただ、見ているもの全て、現実と思わない方が良い。今の俺から言えることは、それだけだ」

「あぁ、分かった。とりあえず、記憶を取り戻して、お前とが枯れるまで話す。それまでお前は、大人しく寢ていろ」

「おう!任せろ」

そして僕は、病室を出る。

僕だけが見ていなかったもの。

見ることが出來なかったもの。

その一つが、これだった。

【神崎】

そう書かれた名札が、病室のドアにあった。

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