《豆腐メンタル! 無敵さん》八月一日留守無敵②
「そーなんだー! へぇー! 先生、國語が擔當なのに知らなかったぁー」
目をきらきらさせて大仰に驚く先生につられ、他のやつらにも「へぇー」とか「すげー」とか心されちゃってるけれども。……あのー。もう座っていいですか? つか、國語擔當なのかよ。中學の國語教師は知ってたぞ、これ。この高校、大丈夫なのか?
「じゃあじゃあ、八月一日は? この名字には、どんな由來があるの?」
俺の不安に一切気付く様子もない先生は、わくわくが抑えきれないらしく、教壇で前のめりになっている。自然、教室に大人しく座っている、まだ様子見しているのであろう三四人の生徒たちも、俺に好奇の視線を向けてきた。うああ。勘弁してくれよ。俺、目立つの好きじゃないんだよ。
が、無視するわけにもいかない。相手は先生。俺生徒。教師をシカトするなんて、不良みたいなことは出來ない。俺は真面目なんだから。
あれ? でも、一人だけ俯いているやつがいるな。俺に興味無いようだ。それはそれでちょっと寂しかったりする俺って我儘自儘? にしても、なんだか暗そうな子だなぁ……。ま、どうでもいいか。とりあえずは答えておこう。
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「えっとですね。なんか舊暦の八月一日に稲穂を摘み取っていたから、とか聞きましたけど。四月一日でワタヌキって読むのと同じみたいです」
早口でそう答え、俺はささっと著席した。
「ほんとぉー! ワタヌキさんは四月なんだー。おもしろーい」
これも知らねーのかよ。もっと勉強してくれよ、先生。
両方の手をぱちんと合わせ、にぱぁ、と無邪気に笑う先生。みんなもつられてほのぼのとした笑顔になった。油斷すると、俺も頬が緩んでしまいそうだった。なんか怖いな、この先生。気付かないうちに骨抜きにされそうだ。
にしても、なんだこの教室の空気。こんなの小學生以來なんだが。ここ、本當に高校なの? 地元で弁護士だの醫師だのしている人の出校は大概ここっていうくらいの進學校のはずなんだが、意外と殺伐さがなさそうだ。ああ、良かった。
「ちなみにー、先生はー、」
先生はおもむろに背中を向けると、黒板に白いチョークで何事か書き毆り始めた。黒板に向かった先生は、教卓に隠れて三分の一くらいしか見えない。ちっちぇな、おい。後ろから抱っこしたくなっちゃうぞっ☆
「こういう名前でーす。読める人ー?」
黒板には、書で力強く《留守留子》と書かれている。……なんで書になってんの? チョークなのに、どうやったらそうなんの?
「あれれぇー? だーれも読めないのぉー?」
先生は勝ち誇ったように教室を睥睨した。不敵な笑みがなんかむかつく。いや、読めないんじゃなくて、手を挙げたくないだけだと思うがな。分かってくれてるよね、先生?
そんな俺の願いも虛しく、ほどなくして先生は腰に手を當てると、「仕方がないなぁ」と息を吐いた。なんかカチンとくるじだ。
「これはねー、『とめもりるみこ』って読みますー。なんかねー、源頼朝って偉い人のー、留守番をしていたのがルーツだっていう、由緒正しい姓なんですよー」
留守先生はそう言うと、自慢げにえっへん、とを反らした。あ。意外と大きい。
それにしても、なんてふわふわとした説明なんだ。ホントだとしても噓っぽい。それ、留守番ってゆーか、あれだろ? お城とかの、留守居役のことなんじゃねーの? 留守番と留守居役じゃあ、重みが全然違うだろ。雰囲気的に。
そう思ったのは俺だけではなかったらしく、教室中には苦笑いが満ちていた。留守先生は、早速俺たち生徒に舐められることになりそうだな。ご愁傷様。
気付けば先生の自己紹介がまだだったというグダグダなイベントも、ここでしだけ盛り上がりを見せたが、その後は特に何もなく淡々と進んでいった。
まぁ、留守先生も名前だけしか教えてくれていないし、これはこれでいいんだけれども。年齢がちょっとだけ知りたい気もするんだけどなぁ、俺的には。でも、言わないってことは結構気にしているのかも知れないし、へたなことを聞くのはよそう。もし萬が一、思っていたよりも年だったりしたら、なんか微妙な空気になりそうだもんな。泣かれても困るし。メンタル弱そうだし、留守先生。
とか考えているうちに、順番は一人の生徒に回っていた。
俺はまだ知らない。このが直後に言い放つ、とんでもないことを。
それは「宇宙人とか超能力者とか未來人とかいたら、すぐに名乗り出なさい。わたしは、普通の人間になど興味はないの」という、衝撃的な自己紹介シーンが出てくる語を想起させるようなことだった。ちなみに俺はこの作品でライトノベルにはまっている。
「じゃあ、次ね。無敵睦むてきむつみさん。お願いします」
「無敵?」
あちこちから、「ブーッ」と噴き出す聲がした。そりゃそうだろう。この名前、インパクトありすぎだ。マジで本名? 一、どんなやつなんだ? 《睦》ってからには子なんだろうけど、こんな名字を背負って今まで生きてきた人間には興味がある。
俺は「はい」と弱々しい聲を出し、がたっと椅子を鳴らした子へと目を向けた。窓際やや後ろ寄りの席から見ると、廊下側から二列目、前から二番目の彼の席へは、全員の視線が集中していた。みな目をきらきらとさせている辺り、やはり興味があるんだろう。
これが俺の大好きな學園異能バトル系ライトノベルだったら、彼は確実に最強的な能力を持っていることだろう。が、生憎これは現実だ。右腕が勝手に燃えだしたりもしないし、いつも眼帯で隠されている左目が、なんかおかしなモノを見たりすることもない。そんなヤツは存在しないし、だからこそ平和にのほほんと生きていける。
不可思議な語に憧れはあるが、現実にそんな世界にり込むのは遠慮したい。ああいうのは、安全な観客席からポップコーンを片手に見るから楽しいのだ。だって、俺なんかは登場してすぐリタイアするモブキャラ確定なんだもん。主人公の強さを引き立てる為だけに生み出されて使い捨てされるなんて絶対イヤだ。
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【本編完結済】 拝啓勇者様。幼女に転生したので、もう國には戻れません! ~伝説の魔女は二度目の人生でも最強でした~ 【書籍発売中&コミカライズ企畫進行中】
【本編完結済】 2022年4月5日 ぶんか社BKブックスより書籍第1巻が発売になりました。続けて第2巻も9月5日に発売予定です。 また、コミカライズ企畫も進行中。 これもひとえに皆様の応援のおかげです。本當にありがとうございました。 低身長金髪ロリ魔女が暴れまくる成り上がりの物語。 元チート級魔女の生き殘りを賭けた戦いの記録。 212歳の最強魔女アニエスは、魔王討伐の最終決戦で深手を負って死にかける。 仲間を逃がすために自ら犠牲になったアニエスは転生魔法によって生き返りを図るが、なぜか転生先は三歳の幼女だった!? これまで魔法と王國のためだけに己の人生を捧げて來た、元最強魔女が歩む第二の人生とは。 見た目は幼女、中身は212歳。 ロリババアな魔女をめぐる様々な出來事と策略、陰謀、そして周囲の人間たちの思惑を描いていきます。 第一部「幼女期編」完結しました。 150話までお付き合いいただき、ありがとうございました。 第二部「少女期編」始まりました。 低身長童顔ロリ細身巨乳金髪ドリル縦ロールにクラスチェンジした、老害リタの橫暴ぶりを引き続きお楽しみください。 2021年9月28日 特集ページ「今日の一冊」に掲載されました。 書籍化&コミカライズ決まりました。 これもひとえに皆様の応援のおかげです。ありがとうございました。 2022年2月17日 書籍化に伴いまして、タイトルを変更しました。 舊タイトルは「ロリババアと愉快な仲間たち ――転生したら幼女だった!? 老害ロリ魔女無雙で生き殘る!! ぬぉー!!」です。 2022年2月23日 本編完結しました。 長らくのお付き合いに感謝いたします。ありがとうございました。 900萬PVありがとうございました。こうして書き続けられるのも、読者の皆様のおかげです。 この作品は「カクヨム」「ハーメルン」にも投稿しています。 ※本作品は「黒井ちくわ」の著作物であり、無斷転載、複製、改変等は禁止します。
8 112【書籍化】幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった
【コミカライズ決定しました!】 一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。 毎日えげつない言葉で俺を貶し、尊厳を奪い、精神的に追い詰めてきた。 身も心もボロボロにされた俺は、ついに彼女との絶縁を宣言する。 「颯馬先輩、ほーんと使えないですよねえ。それで私の彼氏とかありえないんですけどぉ」 「わかった。じゃあもう別れよう」 「ひあっ……?」 俺の人生を我が物顔で支配していた花火もいなくなったし、これからは自由気ままに生きよう。 そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の生徒から賞賛を浴びて、學園一の人気者になっていた。 しかも、花火とは真逆で、めちゃくちゃ性格のいい隣の席の美少女から、「ずっと好きだった」と告白されてしまった。 って花火さん、なんかボロボロみたいだけど、どうした? ※日間ランキング1位(総合)、日間・週間・月間・四半期ランキング1位(現実世界戀愛ジャンル)になれました 応援いただきありがとうございます!
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