《豆腐メンタル! 無敵さん》三日目七谷水難事件⑤
「なんでもないと言ってるだろ? ホズミが前髪をかきあげる仕草に俺が痺れてしまったとか、そういう時、俺はエクスタシーをじて聲を出すのが我慢できなくなるとか、そんなことは全然ない。だから、なんでもないと言っているんだ」
後藤田は機の上に”の”の字を何度も書いてそう答えた。
「ごとっちゃん、ホモなんだ!」
悲鳴にも似た七谷のびが、教室に満ちる朝のらかなを切り裂いた。途端、教室中がざわっとなった。子など「キャー!」ってんじゃったりしてる。しかも、「ホズミってホモなんだって! ドSでホモ! もう、いますぐ死ねばいいのに!」とか言っちゃってる子もいたりした。
なんでだ! どうして俺が非難されてんだ! はっ。まさか、「ごとっちゃん」と「オトっちゃん」を聞き間違えて? もしそうなら。……この誤解、お前のせいじゃねぇか、七谷ぃーっ!
「違う! 俺はホモじゃない! 俺はただ、ホズミが好きなだけなんだ!」
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後藤田が真っ赤になって抗議した。
「ちょっと待てぇっ、後藤田ぁっ!」
俺は機をばんと叩いた。それ、疑が確信に変わるだろ! とは思うものの、やっぱり聲は出なかった。クララのいくじなしっ! ハイジの気持ちが良く理解出來てきた。
「それのどこがホモじゃないの、ごとっちゃんっ!?」と金切り聲でぶ七谷は涙目になっていた。
「違う! 全然違う! ホズミって、かっこいいと思うだろ? かっこいいヤツを眺めてため息出るとか、普通じゃないか! 子だって、そういうことってあるんじゃないか?」
「いや、あるよ! 確かにあるけど! でも、さすがにあんな変な聲は出ないよ!」
正論だった。見かけによらず、七谷もなかなか鋭いところをついてくる。て、んなことないか。誰でも思うわ、そんなこと。後藤田の旗は悪かった。當然だ。圧倒的に不利だから。
だが、後藤田は、この後、とんでもない言葉でこの劣勢を覆す。大きな犠牲を払って。
「くっ。そうかも知れん。しかし、そうでもないとも言えるはずだ。かっこいいとかかわいいとか、そういう人間を見た時の反応など人それぞれなんだから。俺の吐息は確かに相當個的であると認めよう。だが、それがホモだという理由にはならないっ!」
「でも、限りなくホモに近いという推測は出來るよ? しかも、結構信憑高いと思う」
「ふはは。甘いぞ、七谷。俺には、ホモではないという証拠がある。揺るぎない事実がな」
後藤田がにやりと笑う。俺にはすでに凄い不気味にしか映らないんだが。俺がこいつに「爽やかだなー」なんて思うことはもう二度とないだろう。
「証拠って?」
七谷がごくりとを鳴らした。七谷も出來ればホモではないと証明してしいんだろう。だって、俺もそうだから。
実際、テレビとかだとおねぇキャラとかニューハーフだとか珍しくないけどさ。こんな近にいられると、かなり恐ろしいもんがあるんだよぉ!
いや、ホモが悪いとは言わないよ? 同婚が法的に認められてるとこだってあるんだし。それも一つのの形だと、理では分かるけど。だから俺とは関係ない人同士なら、そんなのどうだって良かったりする。
でも、そのの形、俺にはけ容れられないから。の子ともまともに付き合ったことないのに、何が悲しくて男に走らなきゃなんないの? 俺はまだ、の子とのお付き合いに絶してないんだよぉ!
でも、多分、後藤田だって絶したってことはないだろう。じゃあなに? 真のホモってこと? もしそうなら、めちゃくちゃタチ悪いじゃないか。高校學三日目にして、もう転校したくなったんだけど。
かくして、後藤田は証拠を提示した。のポケットから出した一枚のカードを掲げる後藤田晃司。それは。
「なにこれ? 寫真?」
七谷がカードを覗きこんで小首を傾げた。俺も気付けば席を立ち、そのカードに引き寄せられていた。
「そう。これは、俺の妹の寫真だ」
後藤田の聲は更に低く凄みのあるものになっていた。説得するには大きな武となりそうな、力強くてはっきりと聞き取れる聲だ。
「……なんで、これが証拠なの?」
聞いた後、七谷は「嫌な予しかしないけど」と呟いた。俺も全く同だった。しかして、その予は的中した。俺の悪い予、もう予知能力レベルだ。
「俺は、妹をしている。しかも、家族としてでは無く、異としてしている。妹の別はだろう? だから、俺はホモじゃない」
後藤田の澄み渡るようないい聲が、教室中の隅々にまで行き屆いた。教室の四隅に固まって話していたヤツらが、白い目を無言でこちらに向けたから、俺はそう判斷した。
「ふぅん。それなら確かにホモではないが、近親者に的求を抱く真の変態ということにはなったな」
「がはぁっ!」
ずっと本を読んでいた黒野の言葉が、後藤田の脳天に突き刺さった。
「はわぁ……。リアル、近親相……」
知らないうちに三枚のタオルをに巻き付けミイラのようになった無敵さんがらした呟きを、俺は聞き逃さなかった。そして、みんなも聞き逃していなかった。全員の視線が、一斉に無敵さんを向いたのだから。
何もじもじしてやがるんだ、無敵さん。お前が一番怖いんだよ。変態さから言ってもな。
しかし、なんなんだ、こいつら?
俺とした事が、なんにも喋らせてもらえなかったぞ!
「……朝っぱらから、なんて話をしているんだ、あいつら……?」
質どころか、まだ名前も把握していない男子たちからの反応は冷ややかだった。男子であればこの手の下ネタ耐はわりと強いと思っていたのに。まぁ、さすがにガチホモやリアル近親相には誰でも引くと思うけど。
てか、ただ「している」って言っただけなのに近親相確定してるってどういうこと? 多分無敵さんの呟きのせいだけど。
「信じらんない。後藤田だっけ? も、そうだけど。とにかくホズミは生きているのがもう犯罪だよね。わたし、このクラスで純潔を保てるのか自信なくなってきた」
とある子、談。さて、では心の中で突っ込みをれるとするか。それが俺の趣味だし。……趣味のセンス悪いな、我ながら。
だいたい、純潔を保てないクラスってどんなんだよ? そんなクラスがあったら新聞に載るぞ。あと、お前ごときでは『純潔』を著こなせない。あれは皐月様でも無理があったくらいだからな。なんてこと言ってやっても理解出來る子なんていないだろうけど。いたらちょっと嬉しいけど。
つーか、子たちからの非難の矛先は俺限定かよ。って、が理屈を超越するとこあるからかな? 理屈抜きで、とにかく俺が全て悪いことにしたいんだろ。その方が安心出來るということか。それって思考停止っていうか放棄してるよね? ヤバい。俺、このクラスで安定のスケープゴート確定っぽい。で、そうなる原因って全部無敵さんにあるわけだが。
あいつの名前、「元兇さん」のが相応しいなと思いました。
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