《お悩み相談部!》一章いつもの日常

十月というのは季節の変わり目だ。

窓から見える木々も葉を紅葉に染め上げる。

學校生活において放課後という言葉には不思議な魅力がある。

部室でいつも同じことをしているだけだというのに霞んだ日常が華やかになる。

かくいう俺もそんな代わり映えのない放課後を今日も過ごしていた。

「せーんぱーい。漫畫とってくださいよ」

俺のまえで炬燵にを突っ込み顔だけ覗かせているが夕日のようなの髪をだらしなく床へと垂らしながら、炬燵からし離れた位置にある棚を指差す。

「うるせえ、晝間夜ひかんや 。先輩をこき使おうとするな」

「ええー、いいじゃないですか?可い後輩の些細なお願いを聞いてくれても。ねえ?先輩もそう思いますよね?」

仔犬のように元気な聲で俺の左に視線をおくる。

後輩から肯定を求められた緋野靜流ひのしずるが困った顔でこちらを見る。

「必ずしも同意し兼ねますが、在原くん。それぐらいいいんじゃないですか」

いいながらもぞもぞもぞと炬燵の奧深くにを這いずらせる。

「おめえら単に炬燵から出たくないだけだろ」

仕方なしに漫畫を取りに炬燵から出ようとしたが、結局、俺が炬燵から出ることはなかった。

なぜならーー都合よく使えるやつが訪れたからだ。

部室の扉がバーン!と勢いよく開かれる。

「みっなさーん☆さいかわなアイドル。斉川唯さいかわゆいが來ましたよー!」

今日も変わらぬハイテンション。左右でまとめられた髪が楽しそうにぴょこぴょこと揺れている。

「斉川、そこの漫畫とっくれ」

目線だけで合図を送ると、斉川はじっと俺を見返してくる。

「なんです、いきなり!?」

不服そうに悪態をつきながらも言われた通りに棚から漫畫を持って來てくれる。

斉川から漫畫をけ取るとそれを晝間夜に渡す。

「ほれ、ご所の漫畫だ」

「ありがとうございます」

斉川が意外な顔を向けてくる。

「あれ在原さんが読むんじゃなかったんですか?」

「いや、読まんけど」

「まさか……私、後輩にパシられました!?」

「結果的にそうなるな」

斉川が炬燵にもぞもぞってくる。

「はふう……炬燵ってやっぱりあったかいですね」

「おい、パシられたことはもういいのか?」

「可い後輩ですし別にいいですよ。妹にしいくらいです」

にやにやと斉川が晝間夜を見る。

「ひっ、せんぱい。助けてください!なんだかヘビに睨まれたカエルです」

晝間夜が助けを求めてくるが、

「自業自得だわ」

冷ややかにそう返す。斉川の目がヤバイ目になっていた。アイドルがしちゃだめな目だわ。

そんなこんなで俺たちの日常は今日も緩やかに過ぎていく。

まあ、あとから考えればこんなことはちゃんちゃらおかしかったわけだが。

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