《栴檀禮賛》の悪徳と僕の考え

は悪徳に満ちている。例えば、この勉強時の恐ろしい集中力によって起こる、他人とのコミュニケーションリズムのズレ。これのせいで、周りとの協調が無いと思われがちである。

また、彼の人格や容姿には欠點らしい欠點が無い。才兼備、完璧超人という悪徳。

そして他者とは比べにならない程の圧倒的な頭脳。100人が100人、彼の事を天才と評すだろう。それは正に、彼の家庭が良い環境であるという事に起因するで、幸福の連鎖の権化という悪徳。

他にも挙げればキリが無いが......別にこれらは僕が初めて言ったものでは無い。この學校の、もしくは外部のどこかの心無い誰かが言い始めた、ひねくれた見方によるものだ。

バカバカしい。そんな、ひねくれた見方で世界を見ているから、お前らは瓦なのだ。と、僕はひっそりと思っている。

この原石を前にしては、恐らく周りの者などほぼ全てが瓦だろう。いや、もはや瓦ですら無いのかもしれない。或いは塵芥? いや、流石にそこまで言ってしまうと僕の自己肯定が弱くなってしまう。

まぁ、僕が言いたいのは、彼の近くにいれるだけで、何かご利益的なものまでじてしまうほど、彼は素晴らしいという事だ。

これは決して誇張表現などでは無い。僕個人としての、普通な想を述べた迄だ。

普通な想と言えば、僕は至って普通な人間だ。彼が天才である反面、一緒にいる僕は凡才。

絶対的なバカでは無いにせよ、彼と一緒にいると、どうしても相対的にバカになる。

たまに劣等も抱く時だってある。そりゃ普通の覚ならそうだ。しかし、彼の近くにいると、何故かその劣等が、まるでこの世の中で最もくだらないようなものに思えてきて、いつしか忘れ去っているのだ。

は本當に不思議なものだ。數ヶ月近く一緒に居るのに、未だに分からないことが沢山ある。

だが僕は敢えて、その分からない謎を無理に解き明かそうとはしない。

無理に解き明かそうとすれば彼との絆に傷がつきかねないだろうし、もっと個人的な話をすれば、謎は謎のままにしておいた方が面白いからだ。

そうでなくては、こんなつまらない世の中を楽しく生きていくことなんて出來ない。分からないままくらいの方が、逆に丁度良いのだ。

ミロのヴィーナスの腕みたいなものだ。正解の形は存在するのだろうけど、それは決して各々が思う妄想より面白くはない。

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