《栴檀禮賛》が見た悪夢と過去

「アミ......アミ......」

どこかから私の名を呼ぶ聲がする。周りにはとても濃い霧が立ち込めていて、數メートル先も見えない。

「アミ......アミ......」

しかし、確実にどこかから私の名を呼ぶ聲がするのだ。前か? 後ろか? 右か? 左か? そもそもこんな霧の中で前後左右などという概念は通用するのか?

私が取り留めもなく、よく分からない方向に進んでいくと、いきなりシャッター音と共に、大量のフラッシュが霧の世界を照らした。

私は背中じゅうが大量の蟻に噛まれたような覚がし、そしてその噛まれた箇所から異様な寒気がするのをじた。

私は怯え、そして竦んだ。その場にしゃがみ込んだ。歯をカチカチ鳴らして、両腕で自分の肩をしっかり抱いて、ブルブル震えてけなくなった。

そして、一瞬にして霧は晴れ、視界が開けた先には、あの日のあの場所があった。

怖気が私の心の深淵から這い出てくるのをじた。まるで人の形をしているかのように、深く暗い私の心の奧底から手をばし、私の意識の表層へと這い出てくる。

達が、まるで私を食い荒らしていくかのように......そして後ろを振り返れば、私の心に深い傷を殘した、あの場所が悠々と聳え立っていた。

まるで私の背後がじていた寒気の原因が、そこ・・から吹き荒ぶ冷気であったかのように、それは裏付けとして存在していた。

「......ミ......アミ! アミ!」

「うわあああああ!」

私は、私の呼ぶ聲で目を覚ました。とてつもないびと共に。

「大丈夫......?」

「お母さん......」

「また悪夢?」

「うん......」

「隨分と魘されてたから、そうじゃないかと思ってね......」

チラリと壁掛け時計に目をやると、針は4時を指し示していた。

「ごめん、こんな真夜中に起こしちゃって......私のために起きてくれたんだよね......もう大丈夫......し疲れてただけだから......」

私はフラフラとベッドから起き上がり、ボーッとする頭にしずつエンジンをかけていった。

週に何回かは、一人暮らししてる部屋では無く、この実家に帰ってくる。しかし、この実家に帰ってくると、高確率で悪夢を見るのだ。

「暫くここに帰ってくるのやめたら?」

「ちょっと検討してみる......」

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください