《栴檀禮賛》クイズ野郎と難読漢字

放課後、僕はいつも通り野球部の先輩達の特別補講に使うテキストを用意し、空き教室に向かっていた。

空き教室が見えてきた辺りで、前方から會話しながら近づいてくるアミとミカが視界にった。

「あ、ハヤテ、今日の放課後の特別補講なんだけどさ、ミカにプリント配布と回収を手伝ってもらう事にしたから、今回は休みでいいよ。」

「あ、そうなんだ。」

「うん、これからは何回か代でやろうと思ってて。ハヤテにも用事くらいはあるだろうしね。」

「ふんふん、了解。」

僕はミカにプリントの束を渡して、そのまま図書室に向かった。たぶん今ごろクイズ野郎が図書室で本の蟲をしている頃だ。

図書室に著くと、僕の予想通りクイズ野郎テツが居て、馬鹿みたいにブ厚い本を陶蕓家みたいな渋い顔して読んでいた。

「よぉテツ。」

「なんだ、ハヤテか。」

「なんだってなんだよ。まーいいや、この1週間のうち何処かのタイミングでお前さんに會いたかったんだよ。」

「まるで生娘みたいな思考だな。」

「気難しい陶蕓家みたいな顔して、クソぶ厚い本読んでるお前よりはマシさ。」

「んで、用事ってのは?」

「10年ちょっと前に起きた、雪山での遭難事件について知りたいんだ。」

僕は昨晩アミがけたカウンセリングの容を、しだけ母親から聞かされていた。しかし、多くの事は教えて貰えず、アミに直接聞くことも何だか憚られた。

「お前......遂にそこに踏み込むか。」

「やっぱり知ってたんだな。」

「もちろん......だけどイイのか? お前、アミとの関係に傷がつくことになるぞ。」

「みだりに口外したりなんかしないさ。」

「そんなのは『最低ライン守るべき事』だ。守って當たり前だ。俺が心配してるのは、お前がこの事実を聞いて、彼に対する態度を変えてしまう事なんだよ。」

「態度?」

「あぁ、お前は良くも悪くも普通なヤツだ。だから『とんでもない事』を聞かされたあと、平靜を保って居られるわけが無い。

対してアミは凄い天才だ。お前が何処か余所余所しい態度を取ってることなんて、一瞬で見抜かれるぞ。」

「別にいい。知らずに後悔するより、知って後悔した方が1億倍マシだ。」

「分かったよ......じゃあいつも通り、お前にクイズを出す。正解したら教えてやる。」

テツはそう言いながら、手元にあった1枚のペラ紙に『偃蹇』という文字を書いた。

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