大きな音を立て、長機とともに人が倒れた。

同時に幾人かの悲鳴も上がる。

蹴り飛ばされた男子生徒は２名。部屋の隅で震えていた子たちの前まで転がって、ようやくその貧相なが停止した。

「く、くそっ」

無様な格好をさらしてしまったにも関わらず、子の前だからか虛勢を張って、蹴った主を睨みつける。

その視線は、小さなホワイトボードの前に立つひとりの子生徒へ。

引き締まった。すらっと長い手足。ショートカットに長めの前髪から覗く切れ長の目が印象的な子だった。

彼は仁王立ちし、冷酷な目で彼らを見下ろしていた。

その威圧はもはや彼らの比ではなかった。

いわば、絶対恐怖。

目を合わせていると本能でわかる。やりあっても、一撃ですら屆かないことを。

「誰の許可を得てここで派行為をしたのかしら」

「ひっっっっっ」

まさに蛇とカエル狀態。

頭を抱えて機のに隠れる男子生徒たちの再起は、もはや絶的だった。

「……で」

凍てた空気のまま、ショートカットの子生徒は、次に部屋の端でこまっている子集団に目を向ける。

「このお菓子の山は？　これはネイル？　へえ、漫畫ね。……遊びに來てるのかしら？」

「……」

いつか誰かが言った。

『子の群れにかなうものなし』と。

大抵子が集まればペラペラと託が飛びうものだが、この場で意見を述べる空気が読めない者はいなかった。

反応がないため、子生徒は大きなため息をついた。再び男子生徒たちを見やる。

「問答無用であんたらサルどもはクビだから。園にお帰り」

「あ！？　このア……っ！？」

最後に吠えようとした男子たちだが、目が合っただけで震え上がる始末。

「虎蛇會の名を、つまんないサルたちので汚させるわけにはいかないのよ。人語、理解できる？」

「くっそ、くそお！　……獣、テメーなんか野獣だらああああああああ！！！！！」

男子生徒たちは捨て臺詞を殘し、子生徒が指差すドアから一目散に逃げ出した。

ほかの生徒たちもそれに便乗して、次々に部屋を飛び出していく。

部屋には、意外にも子生徒を除いて２人殘っていた。

「フフフ……」と、そのうちのひとりが意味ありげに笑い出す。

子生徒は目だけかして、部屋の奧にいるその男を視界に捉えた。

「まあ正當防衛でしょうね。畫回してたんで、先生になにか言われたら貸しますよ」

「……あらやるわね」

學校の平和なはずの放課後。

小さな部屋のひとつで、そんなありえない日常がたしかに起きていた。