《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/18(月) 転校生①
結局、早朝急虎蛇會會議は「書記を探せ」という通達のみで解散。朝のホームルームをけるため、七瀬と教室に向かった。
音和は1年で會長は3年。そして俺と七瀬は2年で同じクラスだ。
部屋を出る前、七瀬はさくっと髪のをポニーテールに結び直していた。
「おい。それさー……」
アップヘアにして現れた耳に、校則違反のピアスが目立つ。さすがにそれは教師になんか言われるだろう。
「えー? かたいなーなっちゃんよー。委員會のときはちゃんと隠してるじゃん。えらいっしょ褒めてー」
しかし當人は全く気にせず、楽しそうに笑いながら、馴れ馴れしく肩を組んでくる始末である。
「ば、ばかヤメロ!」
どもったのはほかでもない。シャンプーの超いい香りがほんのりと流れてきたからだよ!!
純男子高校生こと俺には、子の芳香とはとても甘なであり、刺激の強すぎるものだった。
ああ、思いっきりここで深呼吸できたらどんなに幸せだろうか……。
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しかし、それをしないのは俺にもちゃんとした理があるからだ。
今後も彼との友好的な関係を続けるためには、絶対なにがなんでもそんな変態行為は……。
「ハアハア……トモミ……」
そう、ハアハアなんてしてはいけないって……俺!? ちげーよ誰だよ!?
「きゃっ!?」
「ちーす」
いつからいたのだろうか。俺のうなじ近くに長180cm超えの大男の顔があった。
「蘆屋さん。俺のトモミをしないでくださる?」
「ってコラア! トモミって言うんじゃねえ!!」
持っていたカバンを振り抜くと示し合わせたかのように七瀬はしゃがみこみ、ポニテの上を抜けて、野中の側頭部に直撃した。
「ひでぶううっ!!!」
三下のようにんではいるが、よく見るとしっかり左手でキャッチしてやがる。
コイツ、無駄に運神経がいいんだよな……。
「朝から元気ねトモミちゃん」
「だから。名・前・で・呼・ぶ・な!!」
ぽいっと投げ返されたカバンをキャッチしつつ、俺はちょっと涙目だ。
「くそー。自分は野中貴臣のなか たかおみっていう男らしい名前だから俺の気持ちが分からないんだ!!」
「っ!? なっちゃ……!」
はっとした表で野中は口元を抑えた。
「なんて可い子なのなっちゃんたら! ゴメンネ、結婚しようネ!!」
「貴臣……! 社に永久就職希ですーー!」
廊下の真ん中で、俺達はアツく抱擁をわした。
「「…………」」
朝の登校時間だけに、たくさんの學生たちが俺達の橫を通り過ぎていく。
誰もが俺らを下げずむように橫目でチラ見し、大きく避けて教室へと向かっていた。
「オラア! ツッコめよ!!」
顔を赤くさせてんだのは野中が先で、さらには近くの男子生徒の襟元を摑んで八つ當たりもしはじめた。
照れるならやるなよ。と思うだろう。しかし、そこがコイツの可いところなんだよな。ふふふ。
野中は俺の親友。校でコイツを知らないヤツはいないんじゃないだろうか。
というのも、長で超整った容姿はモデルさながら。一緒に歩いていても通行人のがほぼ100%振り向くほどだ。
バカだけどスポーツ萬能で背も高く、オーラというかカリスマがある。
格がこんなんだから殘念だと言う教師もいるが、俺はそういうところが好きでコイツとつるんでいた。あとノリも合うしな。
さて、獲になった男子くんには悪いけど、野中の怒りがおさまるまではこちらとしても手を付けられない。
……とりあえず見守るね(ガンバ!)。
一緒にいた七瀬にいたっては、スマホをいじってあくびまでしている。
「助けてやれよ、野中と同中出だろ?」
あごで示すと七瀬は顔をあげた。廊下の向こうでは野中と半泣きになった男子がくんずほぐれずとなっている。
「やーそもそも、あんたらカップルとは関わりたくないですわー」
「違いますからっ! って、本気でいやそうな顔、やめてくださるー!?」
「あれを止められるのは……なっちゃん、キミだけだ」
「なにそれ、俺を人類のための人柱にしようとすなっ!!」
「はあー。なにうぬぼれてんのー、英雄のつもりかおこがましい。ただうるさいチンピラを止めるエサ……よっ!」
それはもう遠慮なくドンと背中を押された勢いで、俺は野中たちに突っ込んだ。
その衝撃で絡まれていた男子も吹っ飛び、やっと野中の呪縛から解き放たれた。
よろける男子にすかさず七瀬が駆け寄る。
「大丈夫? 人間なのにこんな目に合って災難だったね……」
「ちょっとそれ俺たちが人外みたいな言い方だよね!?」
廊下の真ん中で野中と抱き合って倒れていた俺は、さすがに顔を上げて抗議した。
「俺は……なっちゃんとならいいよ」
「いいよじゃねー! 頬染めんな! だからカップル疑が蔓延するんじゃねーか!」
野中のほっぺたを引っ張っている間に、うまく男子生徒も逃げたようだ。
キーンコーンカーンコーンと、予鈴が鳴る。
「じゃああたしまじめなんで行くねー」
「おい歩く校則違反待てやこらァ!!」
去りゆく尾に向かって怒鳴る。
「うっさいなー顔面キノコに歩く!」
「え……キノコ?? つか微妙に凹みづらいわツッコミづらいわ、チョイス最悪か!」
立ち上がって七瀬を追いかけようとすると、座ったままの野中が俺の腕をつかんだ。
「ププーッ。なっちゃん、っていわれてる(笑)」
「おい、イケメンがキノコ顔のほうってどんな見解だよ! それはねーよ! 本気で腹立つわーッ!!」
その腕を思いっきり引き上げて立たせる。
「ほら、遅刻するから急ごうぜ」
「意のままに~」
そして俺たちも教室へと向かった。
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