《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/18(月) 転校生⑤

晝メシも片付き腹が落ち著くと、二人もスマホを見たり寢たりとゆっくり過ごしていた。でもそろそろ時間だ。

俺の膝を枕にしていた音和を起こして立ち上がると、空いた分のスペースに野中が転がった。

「あー俺、もちょい寢ていくわ」

「分かった。天気悪いから雨に気ーつけてな。行くぞ音和」

背中を向けて転がる親友を殘し、音和と校舎に戻る。

屋上の扉を閉め、電気のついていない階段を慎重におりて行く。

その途中で、階段に座っていたなにかに足がぶつかった。

あっと思ったと同時に、

「あっ、あああああーー!!!」

ソレが斷末魔のような聲を上げた。

え、え。ええーー!?

頭が半分パニック狀態におちいる。

ちょっとぶつかっただけなのに「レベル99の勇者にレベル1のモンスターがパンチされました!」みたいに聲張らなくても!

それともなに!? 急所に當たったん?

わけがわからずオロオロしていると、音和が後ろからを乗り出した。

「何? どしたの??」

「な、何かにつまづいて……っ」

暗闇のなか、一生懸命目をこらしてつい「ゲッ」と聲が出た。だってそこにいたのは……

「ひ、の……!?」

間違うわけがない、紺のブレザー。転校生の日野苺が、ひとりきりでうずくまっていた。

「なにやってん……」

聲をかけると、日野は慌てて足元に散らばったなにかを拾い集め出した。

「あ、ごめん手伝うっ」

日野の隣まで下りて手をばそうとすると、彼はすごい形相で顔を上げた。

その表に俺は一瞬ひるむ。

「い・い・で・す・っ!!」と、片手で俺のを押し戻しながら更に威嚇してくる。

その剣幕に唖然としていると、後ろで音和が信じられないことをつぶやいた。

「パンの……耳……」

「いやああああ!!!」

日野は拾ったものをすべて袋に押し込み、に抱き抱えてより小さくうずくまった。

パン NO 耳……?

しかし俺も確かに一瞬、見てしまったんだよな……。階段に散らばる、細長いベージュのぶよぶよを。

「な、なんでもないですからっ」

「えっと、もしかしてそれが晝メ」

「もう、放っておいてくださああいい!」

んでダッシュで階段を駆け下り、その姿は見えなくなった。

ぽかんと口を開けたまま去った方を見ていると、音和が俺の袖を引いて不思議そうに見上げた。

「あの人、なんでここにいるの?」

朝の他校生迷子事件から、説明がまだだったな。

「あ、ああ……転校生だったんだけど……」

「えっ、ええー!」

「なんの因果かうちのクラスに転して……って、時間時間!」

予鈴が鳴り始めた。あと5分で授業がはじまる時間だった。

音和の背中を優しく小突く。

「5限始まるぞ急げー」

「にゃ!」

音和はパタパタと階段を駆け下り、下で振り返る。

「まったねー!!」

大きく手を振って走って行った。人見知りしてないときは本當にお調子者だな、あいつ。

しっかし……。日野、晝メシのい斷ったんだな。それで、ひとりでこっそりパン耳を食べていたところを、俺たちに見つかったわけか。

なんつーか、俺が言うのもなんだけど。

「いろいろ間の悪いヤツ……」

    人が読んでいる<彼女たちを守るために俺は死ぬことにした>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください