《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/18(月) 転校生⑦

虎蛇に行くとすでに全員揃い、俺を待っていた。

申し訳ない思いを表現しようと、背中を丸め、小さくなって室する。

しかし、この若干ピリついた空気は俺が遅れただけが理由じゃない。

り口から見て左側。長テーブルの一番奧で會長の斜め前の席に、抹茶の薄手のカーディガンを羽織った見慣れない子生徒が、座って本を読んでいた。

……誰?

口パクで『ざ し き わ ら し ?』と會長に聞くと、『黙れ小僧』と早口パクで答えられた。超泣ける。

音和の隣の手頃なパイプイスに座ると、大げさに息を吐いて會長は突然立ち上った。

ぎょっとした一同の視線があつまる。

「書記に適任する者が見つかったわ」

なんだ、新しい書記かー。って、仕事早っ!!

「じゃあ彼の紹介も兼ねて全員自己紹介をしようかと思う。異論はないな」

サクッとそう決めてしまうと、會長は背後のホワイトボードに役職と名前を書き始めた。

名前を書き終わると前に向き直り、全員を見渡した。

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その目からは強い意志をじて、俺はもちろん、きっと全員そうだったと思う。會長にまかせようと即座に判斷し、靜かに言葉を待った。

「虎蛇會長、3年、部田凜々子とりた りりこ。今年の文化祭は絶対に歴史に殘るものにさせるから。言うまでもなく厳しいわよ」

はは……。相変わらず高圧的で會長らしいわ……。

ふと、ぱちぱちと小さな拍手がおこった。見ると新人さんがいつの間にか読んでいた膝の上に置き、姿勢を正して拍手を送っているではないか。

超いい人。

俺もそれにならって拍手してみる。

「うん、じゃあ次」

會長は満足そうに頷くと、きれいな字で次は“副會長”と書いた。

「あい。2年、小鳥遊知実たかなし ともみ。よろしくです」

実行委員への參加は俺の意思じゃなかった。

廊下で數年ぶりにバッタリ顔を合わせた會長が、5月なのにメンバーが揃わないつって無理やり俺をここに連れて來た。

さらに副會長という役職も「昔のよしみだ。やれ」という一言で押し付けられた。

それはもう、有無を言わさぬ勢いで。

ぜんぜん有志の集まりじゃないのが現狀である。

次に“會計”。

「2年、蘆屋七瀬あしや ななせ。いけてないことが嫌いです!!」

「っていう、ギャルです」

「えっ、ギャルなのかあたし」

「ギャルは自分のこと、“ウチ”って言うんだぞ。あとU◯Jが好き」

「なにーそのギャル偏見。つかその伏字の部分一番大事だよ! 無邪気or金のにおい!」

「ちなみに、ギャルはどちらも対応してます」

「いつかギャルに寢首をかかれたらいいのに」

「夜這い大歓迎!」

なぜか意見が合ってしまった。

そんな俺らのやり取りは無視され、“書記”という文字の下に初めて見る名前が記される。

「はじめまして。葛西詩織かさい しおりと申します。3年です」

にっこりと微笑んで、新人さんは頭を下げた。

この人、先輩だったんだな。どうりで見たことないはずだ。

すごく際立っているの白さは漆黒の髪を引き立てていた。大和子という言葉がしっくりハマる。手首なんかすぐにでも折れてしまいそうなほど細い。

この人、儚い。儚さの化だ。

「1年生、穂積音和ほづみ おとわです。副會長をしっかり助けます!」

「できればみんなを助けて、穂積」

會長はたしなめながら、音和の名前も記載する。

ホワイトボードに全員の名前が揃った。

それを、みんなで改めて眺める。

「「「人、なっ!!!!」」」

男いねーし……。

やっぱり當分の活は、メンバー集めがメインになりそうだ。

┛┛┛

グレーがかった街を俺と音和は並んで歩く。中途半端な時間だったからか、俺達たちのほかに歩いている人を見ない。

「知ちゃんー」

商店街に差し掛かったところで音和が後ろから腰に抱きついてきた。

「おっと。どうした」

「手、つないでいい?」

「だめ」

「ケチ」

頬をリスみたいに膨らませて悪態をつくが、背中から離れようとはしない。

「ケチとかそういうのじゃなくて。高校生になったらそういうことはしないのー」

「している人いるもん」

「それはカップルだからでしょ!」

この無防備さ。自分では気づいていないんだろうが、何気に男に人気があるらしい。

初めてその話を聞いたとき、なんとも複雑な気持ちになった。

なんというか、こんなヤツが……と思うと同時に、小中學生の頃とは違って、俺たちは大人になりかけているんだなとか。

長するのは楽しみだ。俺だってかなり背がびた。

でも同時にどんどん音和と違いが出てくる。

こうして歩いてるだけでもいやでも“昔とは違う”という部分が見えて、ちょっぴり寂しさをじるのだ。

それなのに音和はいつまでも子ども気分なので困る。

格はともかくふんわりとしたやわらかい髪や、全的に小さく、丸い瞳も相って、小を思わせるその風貌。格を知らなければ、守ってやりたい子的な位置付けなんだろう。格を除けばな。

「お前もいつか大人になって、誰かと結婚したりするのかねえ……」

やれやれポーズをつけて、大げさにため息をついてみせる。

しかし音和はさも當たり前がごとく、

「あたし、知ちゃん以外の人のものになる気ないよ」

とのたもうた。

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