《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/19(火) 穂積音和②
急に、照れがの中からわき起こる。なんか汗出てきたし。いや、でも、だって音和だぞ? こ、こんなのふつーにやってることだし。平常心、平常心。
結論。
著しているから恥ずかしいんじゃない。校門前で目立っているのが恥ずかしいんだよ!!
登校中の生徒らと目がバッチバチ合うのが気のせいではないと分かってから、シャーーッと威嚇をしたけど埒あかーん!
もう、仕方ねーなっ。
「場所変えるぞ」
抱えていた肩を離して音和の腕を引っ摑み、校門から離した。
┛┛┛
自販売機前は、ホームルーム前ということもあって人がいなかった。ベンチに座らせてりんごジュースのパックを2つ買い、ひとつを渡す。音和はけ取ると夢中でストローを差し込み、足をぶらぶらさせて飲みはじめた。
ひとまずは落ち著いた……か? つか子どもかよ。
ベンチの正面に立って柱にもたれかかり、一口飲んでから俺は意を決して口を開いた。
「勝手に先行くなよ。ばか」
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「!」
ビクッと肩をふるわせて、音和のきが止まった。
「いや、俺が悪いんだけど。ただ……」
自分の気持ちを言葉にするのは恥ずかしいし不安すぎる。でも話さないと。こんなところで俺たちの関係を終わらせたくない。
「びっくりしたっていうか……ちょっとさみしかったし……」
ストローから口を離して音和が顔を上げた。やっぱり泣きそうな顔するんだな。
「知……ちゃんはっ」
ジュースのパックを握りしめた小さな手が震えている。
「あんなこと言ったあたしなんかと、一緒にいられない……」
弱々しい聲に戸う。こいつのこんな顔、ずっと見てなかった。それだけ悩んで苦しめていたのか。
ちく、ちく、と心音に合わせてが痛い。落ち著こうとゆっくり深呼吸をしてみた。
「今も隣に來てくれないことだって、間違ったことしちゃったなってすごく不安なんだよ」
彼の溜まっていた涙がとうとう決壊する。
でもちょっと待って、それは誤解ーー!!
「あのう。こんなときに隣に座れるほど、俺も冷靜じゃないよ」
うわああああああああ、死ぬほど恥ずかしい。
「告白、は、初めてだったんだからさ」
っ、言ってしまったーー!! 普段偉そうにしてるのにまじけない。なんだこのこっぱずかしさ。まるでを見せるような気分! 今すぐ埋められたい。
「え……?」
「だから俺が答えに困ってたのは、どうふるまえばいいか分からなかったから! 告白が迷とかじゃない! お前のことはすっごい大事だし、だからこそ、きちんとしたいから……」
カッコ悪い。なに言ってるのか自分でもわからん。目も合わせられない。でも、カッコつけてる余裕なんて全然ない。
「今好きな子がいるわけじゃないけど、今までそういう風に見たことなかったからびっくりして……」
予鈴が鳴る。音和は立ち上がろうとしなかった。
「お前の気持ちがどうであろうと、俺がお前を邪険にするわけねーだろバカ。バカ。バーカ!!」
予鈴にかぶせて一気にまくしあげながら、音和の両頬を引っ張った。
ああっダセー! 小學生かよ! 超ダセー俺ー! ごめんー! キャーー!!
……。
「……そういえば、今まで知ちゃんの好きな人の話聞いたことない。誰?」
…………へっ?
「いや、いないって……」
大変まずい。音和の接近に目をそらしてごまかす。
「でも今までひとりぐらいはいるよね? 誰?」
「え……」
「それ教えてくれたら、とりあえずは許す」
「——!?」
なにその地獄のような取引き!
いや、ここは適當にこいつの知らない人の名を……。
「噓ついたら一生知ちゃんのこと信用しないからね。あと、知ちゃんが視認している人のことは大把握しているんで」
……こえええええ!?!? 視認ってどこまで!? こええよ!!
ああ、音和の顔はまじまじのまじだ。
うあああああああ。
いやいや、でもおおおおうあああああああ。
もごもごと葛藤していると、おを割と強めにつねられる。
ワカッタ。つくづく、の子のにひかれる男だわ俺は。
ええい……ままよ!
「……子」
「えっ」
音和の顔が引きつる。
「あ……、いや。でも5年くらい前のことだから! 今は全然だし、相手も俺のこと眼中になかったし、なんなら俺のこと、顔も見たくないって言われてたし……。はは」
「……でも今は……」
「うん、今はもうなんでもないよ。部田凜々子はただの委員會の會長。それだけだ」
涼しい顔を見せているが、黒歴史が心の中で暴れていた。
音和にはこんな思いをさせたくないな、うん……。
「あたし……あんなタイプじゃない……どうしよう……」
騒なことをブツブツとつぶやいているが。
「いやいや彼だから好きになったわけで、あのタイプだから好きになったってわけじゃないから。お前はあれにならんでいい!! お前はお前のままでいてくれ」
肩を揺するとハッと意識を取り戻した。
「あたしはあたしでいいの……?」
「うん」
「かいちょのことは……」
「終わってるよ」
「……っ」
ぽすん。と、音和がにすっぽりとおさまった。
本當は學校でこういうのはまずいんだけど。今だけは、仕方ない。好きにさせてやるか。
……と、俺の背中にぽんぽんと優しい衝撃をじた。
こいつなりに、気を使ってくれたのかもしれない。
「告白初めて、って言ったよね」
「っ! なんだよ」
「ごめんね、あたしはあるうー!」
「自慢かよ、泣くなよ! 俺が泣きたいわ!」
「でも、誰とも付き合ってなかったよ」
「っそれは……知ってる……」
「うん。あたしのこと知ってくれてるのも、知ちゃんだけだから」
音和が離れた。
一歩下がって、俺の腕を摑んだまま、意を決したように顔を上げる。
「あたしのこと、人としてでいいから、好き?」
「う、うんそれはもちろん。好きだし大事だよ」
慌てて即答する。
「……それが聞けてよかったっ」
彼は無邪気な笑顔を見せた。
それを見て、俺は心を決める。
「あのさ、返事だけど。文化祭終わるまで待ってもらえないかな」
「……!」
「全部終わったら、ちゃんと考えるから」
「……っぜんぜん、それでいいっ。いいよぉ」
「ん。そしたらもう教室行け」
「はいっ」
いつものランチ後のように軽い口調で、違うのはちょっと涙をためていて。音和は教室へと上がって行った。
「……」
ひとり殘された俺はベンチにどっかり座って、りんごジュースを最後まで飲みきった。
「うう……これから普通に接するの、頑張らねば……」
きっと真っ赤になっている頬を叩いてそのままのけぞる。
朝だっていうのに、今日は無に暑い……。
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