《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/29(金) 蘆屋七瀬③
「やあ。知くんじゃないか」
病院で見知った顔に聲をかけられる。
「お疲れです、おじさん」
まだ勤務中らしい音和のおじさんは、看護師の制服姿だった。
「音和は一緒……じゃないね」
「はは……。ひとりで帰れつったらめちゃキレてました」
音和にはあとでフォローれておかなきゃ。さっきから10分刻みでメッセージがってきている。
攜帯の電源を落として顔を上げると、にこやかなおじさんの顔が神妙な表に変わっていた。
「知くん。調はどうだい?」
「大丈夫ですよ。定期的に病院に來るようになってからは安定しています」
「そうか……。君には本當にすまないことを……っ」
と、突然おじさんは聲を詰まらせた。
驚いた俺は、おじさんの白の裾を引っ張ってとりあえずに連れて行った。
「どうしたんですか急に」
勤務中にも関わらず、おじさんは嗚咽をらして泣いていた。理由がわからず俺は立ち盡くしていた。
「ぼ、僕が……知くんに薬を渡していたから……」
その言葉でやっと気づく。
「それで病気の発見が遅れたんだ。本當にすまない。本當に本當に、ご両親にどう謝っていいか」
「いや、ちょっと待って!」
おじさんは一歩下がってひざをついた。足元はガクガクと震えながらもしっかりとひざをそろえようとしている。
まさか、ちょっと……!
「違う! やめてください!」
「本當に申し訳ない!! 申し訳ございませんでした!!」
おじさんは手と頭を床につけて、泣いて、謝っていた。
俺のせいなのに。俺のせいで大人が責任をじてこんなにも取りしている。
そのままの狀態で嗚咽も止めず、おじさんはひたすら謝り続ける。
「僕はぁっ、人を助けたくてこの世界にったっ。それなのに、こんな取り返しのつかないっ、過ちを犯してしまった」
虛しさに頭が焼け狂いそうだ。
「看護師になったのも、人とより深く向き合える仕事だからだ。そうやって、近に、人の幸せを願っていたのにっ……僕はっ」
「もうやめてください……」
「妻は出て行き、音和をひとりにすることが多くて家は最悪だった。そしてそんな音和と仲良くしてくれた君に、こんな取り返しのつかないことを……!」
「違いますって!」
これはおじさんのせいじゃない。
「薬は……無理やり俺が頼んだんでしょ。それに、おじさんは何度も俺に病院に行くように言ってくれた。従わなかった俺の自業自得です」
自業自得という言葉にが締め付けられる。
それでも、俺に良くしてくれただけのおじさんが、自分を責める姿を見るほうがもっとつらい。
顔を上げてもらおうとおじさんの前にしゃがみこんだ。
「それでもね、知くん。大人は子どもを守らなければいけない立場にいるんだ」
しかしそれを聞いて、ふっと頭が冷えた。
くっそカッコいい言葉だけれど、おじさんだけは、それを言えないはずだ。
「はは……」
「知……くん?」
■■か。
「あいつを一人にして。子どもの責任を取るだけが大人の仕事、ですか……」
やっと頭を上げたおじさんは気まずそうな顔をしていた。
「僕は……その、忙しくて……」
「忙しい人はゴマンといます。それは言い訳になりませんよ」
反論はない。
「俺のことはもういいです。今後に希がないわけじゃないから。で、音和ですけど。話したんでしょうか俺の病気のこと」
おじさんは力なく首を振った。
「言えるはずが……。あの子に、そんな……っ……」
言いよどんで、また泣いた。
そうか、良かった。音和はなにも知らなくていい。
「……そうしてください。おじさんもなにも知らないことにしてください」
彼が知ったらきっと俺よりも悩んで苦しむだろう。目の前の彼のように。
あいつには笑っていてしい。だからしばらくは貧で通すことにしている。普通の高校生活を送ると決めた日から。
おじさんの腕を支えて、一緒に立ってもらった。
「じゃあ俺、行きます……。なんか生意気言ってごめんなさい」
一禮してきびすを返した。
おじさんがそんなに責任をじているだなんて思わなかった。でもし考えれば當前のことだった。
子どもだった俺の軽率な行為で、知らず知らず迷をかけて。あんなにも追い詰めていたんだ。
あふれそうな涙をぐっとこらえる。今、泣いてどうする。
そうやって早足でエントランスまで行くと、同じ高校の制服が目についた。
「って七瀬?」
蘆屋七瀬は病院を迷うことなく、まっすぐと目的地に向かっていた。
あいつ、風邪でも引いているのか? そういえば土日に用事があるって言ってたけど、病院のことか?
「すまん七瀬」
俺は一応口に出してこっそり謝罪したあと、彼のあとを追いかけた。
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