《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/30(土) 蘆屋七瀬②

著替えて、校門で七瀬を待つ。

仲はいいつもりだけど、こうやって待ち合わせることは初めてなんだよなあ。學校帰りに一緒に遊びに行ったことなんて今までなかったし。んで、がらにもなく張してるわけだ。

! 映畫行くとか言われたらどうしよう。金あったっけ。財布を覗き込んでいると背中をぽんと叩かれる。

「やっ!」

振り向くと、七瀬が元気にピースを目の前に出していた。……んだけど。

「なにさ?」

「いや……なんで制服じゃないのかなあって。……つか、なにその服。あと手に持ってるやつとか」

「は? つかなっちゃんなんで制服著て髪のもセットしてるの? 道は?」

「おいやめろ!! 俺のおしゃれを見るな!! ……って道?」

七瀬を再び観察する。業務用つなぎにリュック。工事現場の人ですか?と聞きたくなるような、でっかいシャベルまで擔いでいた。

┛┛┛

「はあ、もうマジ期待はずれ!」

「ひどい言われよう……。俺だって期待はずれだよ」

「昨日病院でおじいちゃんの話聞いたでしょ? 察してよねー!」

「そんなの言わないとわかんねーよ!」

小高い丘に建つ學校の裏は山で、その山道を今、七瀬と二人で歩いていた。

……とんだデートだ。

「到著!」

立ち止のロープをくぐって、七瀬が荷を地面に投げた。

俺達の目の前にはテニスコート3面分くらいの発掘場があった。

発掘場中心部から見上げたところの崖は崩れていて、じいさんが掘っていたらしき土の壁はゆるい泥の傾斜になっていた。

そしてそのふもとは大量の土砂が積もり、なだらかな丘になっている。

「……で?」

すっげーイヤな予がする。

「え、化石探すのよ」

七瀬は當たり前のようにそれを口にした。

「いや、素人がそんなことして危ないだろ……」

「大丈夫大丈夫。そのために虎蛇って古い書庫まであさって、いろいろ勉強したんだからさー」

「……は?」

「じゃないと、あたしがあんなわけわかんない委員會なんかるわけないじゃん」

リュックをごそごそとさぐりながら、悪びれもなく言い放つ。

「もうし読みたい本があったんだけどもう書庫にれないらしいからさ。育祭で勝たなきゃ」

軍手をはめて七瀬は土砂で埋まった壁を睨みつけた。

「絶対あるはずなの。あたしがなんとか見つけるんだから」

そしてシャベルを思い切り斜面に突き立てた。

ゴッ! と音がして、石粒が俺のほうに飛んでくる。

超あぶねえ! 本當に本にそうするって書いてたの!?

「おい……。それ、化石ぶっ壊すんじゃないの……」

「……っ! ……っ!」

まったく聞いてねえ。

一心不に壁を壊している、その背中を叩いた。

「危ないから貸せ」

七瀬のシャベルを奪う。それなりに重いな。

固い土に、ゆっくりとシャベルを突き立てた。

七瀬は小さなスコップに持ち替えて、近くで掘る作業をはじめた。そっちのほうがいくぶん、安全そうだ。

シャベルを何度も何度も土の壁に突き立てていると腕がだるくなってきた。背中に汗が流れ落ちる。

しかし、ここ掘っててまた土が崩れてこないだろうか。俺だけならいいけど、七瀬はどうやって逃がそう……。不安が脳裏に駆け巡る。

壁際にいる俺よりマシか。んで逃げてもらうしかねえな……。

ゴツン ゴツン

シャリ シャリ

ゴツン ゴツン

シャリ シャリ

メシも食わずに日が落ちるまで、俺たちはゴールが見えない作業を黙って繰り返した。

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