《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》5/30(土) 蘆屋七瀬③

し離れた木の下に座り込んで休んだ。

腕は酸でパンパンで、痛くて上がらなかった。疲労が半端ない。

「……ふう。いいダイエットね」

なんかすげえやせ我慢している人がいる!

「確実に腕が太くなるな」

「!?」

「リレー練習してるから腳もか。それで人は俺たちを見ていうんだ、『あれが伝説のマッチョズか!』と」

「う、うそよ! そんな短期間でなるはずないし!!」

「ならねーよ、リレー練習は來週までだし。こっちはいつまでやるのか知らないけど」

七瀬は作業場を見た。俺も一緒に眺める。……気が遠くなった。

「そんな長期間じゃないよ」

七瀬は寂しそうにつぶやく。

「おじいちゃん、もう長くないんだって」

「……ごめん」

「死んじゃう前に、どうしても見つけたいの。あたし、思うんだよね」

落ち著かない様子で、地面の砂をいじっている。

「死後に作品の価値や功績が認められる人ってよくいるけど、そんなの意味ない」

「いや。お前のじーちゃんは十分認められてるじゃんか」

「うん。でも化石をひとつ殘したって思って亡くなるなんてかわいそうだよ。いくら後から見つかったって、おじいちゃんには分からないもん……」

どろどろに汚れた小さな手で、ぎゅっと砂を握っていた。

もう一度、現場を見る。彼はその一心で、気の遠くなるような作業を遂げようとしている。

最初は、ばかげてると思った。しやればあきらめるだろうとも思っていた。でも、そんないつもの気まぐれじゃなかったんだコイツは。大変なことを分かった上で、やろうと決意したんだ。

俺は立ち上がって荷を取りに行った。七瀬もゆっくりと立ち上がり、道を片付け始めた。

「明日は弁當持ってくるかなあ。力盡きて死ぬぞこれ」

「……ごめん」

「ごめんじゃなくて、それくらいスポンサーしろよ、手伝ってんだから」

「! わかったよ……しょうがないな!」

七瀬が笑った。手も顔も靴も服もどろどろだった。

でもそのときの笑顔は、どんな化粧をした七瀬よりも可いと思った。

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