《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》6/6(土) 蘆屋七瀬②
帰宅の準備をして校門で二人を見送ってから、裏山に行くつもりだった。約束はしていないけど、七瀬はいるだろうから。
しかしそれは失敗した。
「「絶対ダメ!!」」
「用事があ」まで言ったところで、二人に両腕をがっちりと摑まれてしまう。
「知実くん。調悪い日は家にまっすぐ帰って! 倒れちゃうから」
「そだよー知ちゃん。最近ずっとふらふら遊んで! 貧治らないんだからね!」
……やべ、逃げられん。
「じゃあ、知実くんをよろしく」
「まかせて日野さん」
家の中までいちごと音和が引っ付いてきた。つかこういうときにチームワーク発揮するなよお前ら……。
いちごは著替えてカフェに。俺と音和は二階住居のリビングに腰を下ろした。今日も日野さんちのちびっ子は遊びに來ている。
「「……」」
完全見張り勢が敷かれていた。
「知ちゃんっ」
「……著替えてくる」
立ち上がり、荷を持って自分の部屋に戻った。くっそあいつら、絶対楽しんでるわ……。
部屋の窓を開けて外を見る。重い雨雲が広がっていた。
あーーーくそ、頭いてぇ……。
チェストから薬を取り出して口に運ぶ。水差しで薬を胃に流し込んだ。
雨が降るんじゃないだろうか。ふと、現場のヒビがった崖が気になった。
七瀬のスマホに電話してみるが……出ない。
作業しているときは俺も七瀬も汚れないように、スマホはかばんの中に置いていた。シカトじゃなきゃ、現場ほぼ確定だな。
通話を切って、著替えてリビングに出ると音和の姿がなかった。拍子抜けしていると、子どもたちが俺をじっと見ていることに気づいた。
し移してみる。
執拗に見てくる。
「……柊《しゅう》、音和は?」
「おとねーちゃんはトイレ」
「音和からなんか言われた?」
「なんかおにいちゃんがしたにおりたらさけんでって」
チッ、小ざかしいまねを。
……急がないとな。
「殘念だなあ。柊と杏にお菓子を買いに行こうと思ってたんだけど」
「えっ」
杏の目が輝いたのを見逃さない。
「でもな、いちごねーちゃんや音和はお前らにお菓子あんまり食べさせたくないみたいで反対するんだよ」
「そ、そんなことしないよ」
「じゃあ柊。最近、お菓子もらったか?」
「……ううん」
柊はしょんぼりして俺を見上げた。
俺は二人の目線と同じ高さに腰を落として、二人の口の前に人差し指を置く。
「緒、できるか?」
「する!!」
「音和に何か聞かれたら、お兄ちゃんは見てないって答えるんだ。君らはテレビを見ていて俺が出たことに気づかなかったってことで」
「「はーい!!」」
「よしよし」
二人の頭をなでてリビングのテレビをつけ、音を立てないように階段を小走りで下りた。
カフェのいちごに気づかれないように、1階の廊下をそっと通り過ぎ、家の玄関から外に出た。
しかしめちゃくちゃ心が痛い。明日お菓子を持って行ってやるからな、ごめんな……。
「ようしゲロックス初號機、行くぞー!」
その昔、あまりの速さに後ろに乗っていた音和がゲロをぶっかけたというすっぱい思い出のあるチャリにまたがって、俺は裏山へと飛ばした。
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