《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》6/7(日) 育祭②
「どうもはじめまして文化祭実行委員カッコ仮カッコ閉じる のみなさん。私たち、生徒會執行部ですわ」
高飛車な態度で俺らの前に立つのは背は低いけど聲の高いツインテールのの子と、その両隣を固めるように男が2名。ひとりは背の高い狐のような目つきのメガネ、もうひとりは眉と顔が異様に濃い男子だった。
「私は生徒會長の吉崎いの。こっちは副會長の八代、書記の鈴見よ」
男たちは直立姿勢のまま、俺たちを品定めするようにじろじろと見ている。
「あら? そこに座っている小さな子はたしか文化祭実行委員カッコ仮カッコ閉じる のリレーメンバーじゃなかったかしら。足が真っ赤だけれども大丈夫? あなた走れるの? 無理しないほうがいいんじゃない?」
座っていた音和を目ざとく見つけて笑う。なんだ……こいつら。
「うっさい。お前だってチビじゃん」
音和は迷うことなく反撃した。とたん、吉崎は顔を引きつらせて會長を睨む。
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「ちょっとなによこの子! あんたどういう教育してんのよ!!」
「ブーメランなことを言うあんたが悪いでしょう。あと教育係はあたしじゃなくて、そこの男の役目よ」
指をさされた俺は生徒會の男どもに睨まれる。ぐ。完全に責任転嫁されてるっ!
「それより、いの。今は口を謹んでくれる? 勝負の前にめごとなんて起こしたくないわ」
にこりともせず、會長は靜かに吉崎を見據えた。吉崎は腕を組んで、それに真っ向から応える。
「ふん、私はが大きいから敵の心配もしてあげたんだけど。その言い草はひどいんじゃない?」
「へらへらしながら怪我人に聲をかけておいて、その言い分は苦しいと思うんだけど?」
「そんなことより文化祭実行委員カッコ仮カッコ閉じる さん。リレーは棄権になるわね。確か人數が足りないんじゃなかったかしら?」
勝ち誇ったように音和を見る。悔しいけど……どう見ても走れるような腳ではない。
「……チュン太を二回走らせようと思う」
「「はあ!?」」
驚いて聲を上げたのは、吉崎だけじゃなくて俺もだった。
「か、會長!?」
「待ちなさい凜々子。それは不正だわ。同じ人が二度走るなんて!」
「5人の走者中、生徒會は男子3名だったっけ? こっちは男の走者は1名。黙っていたけれど、最初からこれってバランスがおかしいわよね?」
「そんなの、人數がないあんたのところが悪いんでしょ!?」
「そうね。でもそれを知った上で、男を3名出してきた。生徒會の意地汚さは全校生徒のみなさんにも一目瞭然よね」
「……っ!」
吉崎はこぶしを握りしめて會長を睨む。
「うちは同じ男が2度走るけど、もちろん力は落ちるわ。2回目は使いにならないかもしれない。だけど、見栄えは男3対男1のリレーよりもマシにならない?」
ギリギリと悔しそうに歯をかみ締めて會長を睨んでいた吉崎だったが、俺を見てフッと嫌な笑みをこぼした。
「分かったわ。ただし條件がある。その1年生の代わりとして出るんだから、チュン太くんは子として出なさい」
「…………??」
時間が止まった。意味が分からなかったのは、虎蛇だけじゃなくて生徒會の男子のほうもだったらしい。
「せ、生徒會長、どういうことですか……」
「八代。ウチにあったでしょ、ウィッグとドレス」
「ありますが……」
「それをチュン太くんに貸し與えなさい」
おい。
「そうすれば、見ている學生も飽きずに楽しめるでしょうよ。ほほほ! それなら二度走るというズルも甘んじて認めましょう。どうかしら凜々子」
高笑いをしている吉崎の隣で、敵の俺を哀れみの目で見てくる生徒會副會長と書記。
ちょっと。
會長。
そんなの、ビシッと……!
「……おもしろい、飲むわ」
「おもしろくねーーよ!!」
しかしどうやら俺には回答権も拒否権もないらしい。
「あははははっ! では鈴見、早急にブツを用意して」
「承知しました」
「じゃあね、文化祭実行委員カッコ仮カッコ閉じる さん」
軽い足取りできびすを返す吉崎。
「君たちもリレーまでに腳を蹴られないように気をつけてください。戦えないとつまらないので」
「八代。余計なことは言わなくていい!」
「そうだぞ、うつけ者!」
「鈴見、なぜご飯のお供の話をするの」
吉崎に肩越しに睨まれた男たちは小さくなり、その背中を追って行った。
「……あいつら、なんで音和が蹴られたこと知ってるんだよくそ!!」
悔しくてテントに置いてある長テーブルを叩いた。
「抑えなさいチュン太」
「だってあいつらが、音和をやったんだろ!? の子にケガさせるなんて腐ってる!」
「そうだとしても、穂積は見てない。証拠がないでしょ」
「……」
怒られて黙り込む。
「まあ、絶対許さないけどね」
そう言うと會長は七瀬を見た。七瀬は驚いた様子で目をぱちぱちとさせた。忘れていた不穏な空気が再び流れる。
「こうなったらあたしたちが頑張らなきゃいけないけど、蘆屋、できる?」
昨日の言い合いからまだわだかまりが殘っていた。でも、を一の字に結んでいた七瀬はゆっくりと頭を下げた。
「昨日はすみませんでした。あたし、走ります」
「そうね。ずっと蘆屋をサポートしてくれたチュン太のためにもそうして」
七瀬、大丈夫か……?
「小鳥遊」
呼ばれたほうに振り返ると、鈴見が紙袋を俺のに押し付けてきた。
「これを著の上から著て走れ。渡したからな。じゃあ」
そう言うと、目も合わせずに去って行った。
橫からいちごが紙袋を覗き込んで俺の顔を見る。
「……て、手伝うねー」
「あ、りがとう……」
その優しさに泣きそうだ。でもできれば、吉崎がいるときに助けてくれたらもっとうれしかったなー!
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