《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》6/7(日) 蘆屋七瀬③

グラウンドに戻って、集合したままだった虎蛇に合流した。

「蘆屋!? どうしたのその顔、そんなに痛む!?」

會長は、俺と七瀬を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。うつむいて力なく首を橫に振る七瀬の元に、ほかのメンバーも集まる。

「……それと昨日はごめんなさい」

唐突に、會長が頭を下げた。驚いて七瀬が顔を上げる。

「その顔を見てやっとわかった気がした。あなたがなにを抱え込んでいるのかは知らないけど……」

「……っ!!」

息を詰める七瀬に、會長は苦笑してみせた。

「話したくないものは無理に聞かない。ただ、チュン太は知ってるのよね?」

七瀬は靜かにうなずく。

「うん、それでいい。あたしは蘆屋がひとりで抱え込んでないかが心配だったから。それに、コイツなら支えてくれるわ」

七瀬は目に涙をためて、頭を靜かに下げた。

「つらいなか、よく走ったね。虎蛇の勝利はあなたの強い神があって、もたらされたものよ」

會長はやさしく、目の前の肩をぽんぽんと叩いた。を震わせて涙を堪える七瀬を、どこかホッとして見守る。

しかしその空気はすぐに壊れた。

グラウンド中に響く甲高いノイズで、スピーカーの電源がったことに気づいた。放送部を見ると同時に、流れたのは擔任の聲。

『2年A組、蘆屋七瀬。今すぐ本部に來なさい』

どくんとが跳ねた。七瀬と俺は無意識に顔を見合わせる。まさか……もうバレた? いや、こんな短時間で特定なんて……。

顔面蒼白で固まった七瀬に、狀況はわからないけど、俺は聲をかけてやらなければいけない。

「……大丈夫。大丈夫だ」

拠はない。でも、口だけにならないように彼を守らないと。力になると約束したのだから。

「チュン太。一緒に行ってやって。あたしたちの助けがいるときは呼びなさい」

そんな俺に會長が聲をかけてくれた。それだけで、いつの間にかこわばっていた顔もふっと力が抜けた。

「たのもしいね、會長。行こう七瀬!」

ゆっくりとみんなの顔を眺めてから七瀬は俺を伺うように見て、こくりと頷いた。

こんな騒ぎの中、テントに呼び出された俺たちに周りの目が刺さる。本部に到著すると擔任が七瀬に駆け寄ってきた。ちらりと俺を見ていぶかしげな表を浮かべたのち、また七瀬に向く。

「蘆屋、お前どこに行ってたんだ! クラス探してもいないし」

七瀬は黙って下を向いた。

「……お母さんから、電話があったんだよ」

「えっ」

七瀬の目が見開かれていく。

「おじいさんの容態が急変したそうだ」

肩が揺れたかと思うと、ストンとが下に落ちた。

支えようとしたが遅く、七瀬の膝は地面についてしまった。

「う……そ……」

なんで、よりによってこんなときに。悪いことが重なるんだよ。

茫然自失となった七瀬のを支えながら、擔任が続ける説明を恨めしく思いながら聞いた。

    人が読んでいる<彼女たちを守るために俺は死ぬことにした>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください