《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》10/26(月) 小鳥遊知実①

音和から昨夜、『しばらく別で學校に行く。お晝も』とメッセがあった。

……前に話したことちゃんと守ってるのね。

力が抜けて、カフェのカウンターに突っ伏した。

虎蛇もないし學年も違うし、しばらく顔を合わせる機會、なさそうだ。

……違う。いつも、音和から俺のところに來てくれていたんだよな。

……だる。

………………

…………

……

「知実くん、おはよっ」

ドアを開けるといつも通りいちごが來ていた。

昨日いろいろあったし気恥ずかしくて、反的に視線を逸らしてしまう。

「おはよ。今日の、弁當」

「いつもありがとう。そだ、知実くんにもあげるね」

そう言ってカバンの中から、ピンクの花柄が描かれた小さな袋を取り出す。

「さっきサチさんにも渡してきたんだけど、今朝クッキー焼いたんだ。よかったらおやつに食べて」

「え、いいの? ありがとう……」

手のひらにポンっと置かれたそれは、自分では絶対に選ばないピンクの花のパッケージで心がそわそわした。

「そういえば、前に『料理得意』って言ってたもんな」

「ああっ、言った! 自分でハードル上げてたね、トホホだよ」

「トホホて。平生まれは言わなくない?」

「そうかな? うちにある漫畫すっごく古いから、柊も杏もこんなじだよ〜。それに『ヤバい』よりも風があっていいと思うんだけど」

「『ヤバい』は江戸時代にできた言葉だぞ。もしかしたらトホホより古い可能あるけど」

「え、そうなの!? 江戸のJKもすごいね!」

「JKじゃないとは思うが。……って、なに?」

急にいちごに腕を引かれて、足を止めた。

音和の家の前だった。

いちごは何も言わないけれど、不安そうに目で訴えてくる。

「……音和とは、しばらく別に登校することになったよ」

ちょっときまりが悪い。

それに音和はひとりで登校するのに、俺だけいちごと一緒に登校っていうのも悪い気もするし。やめたほうがいいのかな……。

「そっか……。じゃあしばらくはあたしと、けしからん男通學しようね!」

いちごがからっとした笑顔を向けてくる。

クッキーといい、元気付けてくれてるつもりなのかな。これは、一緒に行かないとは言えない雰囲気。

再び歩き始めると腕からいちごの手が離れて、なんとなく名殘惜しくて、思わず聲をかける。

「お菓子のお禮さ、なにがいい?」

「えっ、そんなのいらないって!」

「でももらっちゃったしなあ。なんでもいいよ、いちごって普段あまり要求とかしないし。ほらほら、遊びだと思って。俺、いちごの命令聞きたい」

「ええっ、ちょっとその言い方……引くかも」

ははは。「キモい」って言わないのが、いちごのいいところなんだよなあ(前向き)!

「でも、なんでもいいんだ……。えへへ」

隣でころころと表を変える彼の無垢さを、失わせたくないなと思った。

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