《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》10/27(火) 日野 苺②

機にスマホを置くと、知実くんがふーっと息をついた。何か考えている様子だったけど、すぐに顔を上げる。

「そういえばいちご、昨日はクッキーありがとう。あれ超うまかった」

「ほんと!? よかった。また機會があったら作るねっ!」

サチさんへのお禮ってことで焼いたんだけど知実くんにも食べてもらいたかったし、うれしい。自分でもわかるくらいにやけてしまう。

「えー、なになに? いっちー、クッキーあげたの? 二人って最近そういう仲〜?」

あたしたちの話し聲が大きかったのか、七瀬ちゃんも知実くんの席まで來た。

「あ、ううんっ。だいぶ前に料理作るって約束してたの。ちょうどバターいただいたからお菓子を作ってみたんだ〜」

顔の前でぶんぶんと手を振る。七瀬ちゃんは訝しげに、あたしたちの顔をじっと見比べた。

「ふーん? ウチらが修學旅行のときもこっちで一緒だったし、ファンスタでも二人っきりだったらしーじゃん?」

ひー、詮索されてるっ!

「修學旅行のときは野中くんも一緒だったし、ファンスタでもはぐれちゃっただけだよ〜!」

「え、あ、うん、そうそう……」

えっ、なんで知実くんは聲しぼんでるの!?

「なんか、前より仲良くなってる雰囲気〜?」

そ、うなのかな?

自分じゃよくわからないけど、そうだったら、ちょっとうれしかったり。

「そうかそうか、七瀬がついに俺にやきもちを……」

「は? 自意識過剰なんですけど。つーか、なんか置いてけぼりあるっていうか!」

「そう? 一緒に山堀りして弁當つついた仲だろー」

「っ!! 山堀りじゃなくて、発掘だから!! この淺學っ!」

「やだぁ口悪いーっ! いただいた臺灣のお土産のパイナップルケーキも味しかったですよ? なー、野中!」

振り向くと、クラスの男子たちと野中くんが教室にってきたところだった。

「え、なに? おはよー」

野中くんはそのまま知実くんの席の隣に來て、當たり前のように腰を下ろす。

何度席替えしても、野中くんの席は前列あたりをうろうろしているのがおもしろい。

もちろん、今座っているのは別の人の席。

「あ。あたしもココハ來た〜」

七瀬ちゃんはしゅたっと手を挙げると、別の友だちのところへ行ってしまった。

もうちょっと喋りたかったけど、人気者だもんなぁ。

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