《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》10/30(金) 日野 苺⑤

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あのあと知実くんは運ばれる途中で気がついたらしくて、ひとまず病院じゃなく、薬を飲んで保健室で様子を見ることにしたみたい。

授業が終わって晝休みってすぐ、虎蛇メンバーと一緒に保健室に様子を見に行くと、知実くんはすやすやとおやすみ中だった。

誰も寢顔を茶化すことなく、心配そうに見つめていた。

家と連絡を取ってくれた音和ちゃんが言うには、カフェのピークタイムが終わってからサチさんにお迎えに來てもらうことになったみたい。

保健室の先生は、今日はやたらと多い怪我人や病人にてんてこ舞いだったし、知実くんは寢てて話すこともできない。

邪魔しないようにしようってことになって、みんな早々に保健室を出た。

野中くんは音和ちゃんに聲をかけて、二人で屋上へ行くじみたいだった。

七瀬ちゃんはお晝を買うために購買へと行った。

會長としおり先輩は、しょげながらもそのまま虎蛇へ。

あたしもひとりで教室に戻ってお弁當箱を取ってこようとしたけど、自然と足が止まってしまう。

消化不良の気持ちがもやつく。

振り返って、廊下の先を見つめる。

やっぱりちゃんと、自分と向き合わないと。

諦めるためにも、けじめをつけたい。

ひとり保健室に戻って先生に一言かけるけど、忙しそうであんまり聞いてくれなかった。

もういいや。

知実くんのベッドへと向かった。

カーテンを開けると、知実くんはまだよく眠っていた。

ベッドの脇に座ってその寢顔を眺める。

知実くんって一緒に遊んでると子どもっぽいなって思うことがよくあるけど、寢てても子どもみたいに無邪気でかわいい。

……だけどやっぱり、こういうの後ろめたいね。

抜け駆けみたいで、七瀬ちゃんにも音和ちゃんにも罪悪がある。

知実くんのことはね、友だちとしても、すごく大好きなんだ。

心配したいし、力になりたい……。

でもこうやってこの人と一緒にいるだけで、大好きな友だちに嫌な思いをさせちゃうんだよ。

大好きな友だちが、辛い思いをするんだよ。

そういうの、絶対嫌なの。誰かが悲しい思いをするなら、あたしが我慢したほうがマシ。

……そんなことわかってるし、ずっとそうやって生きてきたのに。々しいな。

でも、諦めるから。

もう、こんな気持ちは明日から捨てるから。

最後にするから。

だから今だけ。

今、この時間だけでも。

知実くんのそばにいることを、どうか、どうか、許してください……!

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