《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/2(月) 日野 苺③

「ね、蘆屋さん。ちょっと相談があるんだけど」

ご飯を食べたあとも変わらずにうるさく喋っていたけれど、話がひと段落するのを見計らって、今まで靜かだった音和が思い詰めたように七瀬に聲をかけた。

「お? 珍しいね。いいよいいよ、なに?」

「ん……。下でもいい?」

「おっけー。んじゃみんなお先にね〜」

二人ははしごをおりると屋上の端へと歩いて行った。姿は見えても聲は屆かない。

「なぜ俺ではなく七瀬、が……」

相談されなかったことにへこんでしまう。

いや、凜々姉。チベットスナギツネみたいな顔っ。わかってるんだよ。それでもやっぱりショックなの!

「相談相手がなっちゃんでも誰でもないってことは、まさか絡み? とするとワンチャン俺のことかな……」

「確かにそれだと七瀬ちゃんがいちばんアドバイスくれそう。野中くんのことかはわからないけど、誰かに告白された……とか?」

「えっ!? 俺、ちゃんと告ってなくね? 音和、不安だったのか……。そうだよな、『好きです』だけじゃなくて『結婚しよう』までが告白のワンセット! すぐに伝えてくる!」

野中は震えながら立ち上がると、はしごを飛び降りて行った。

「アホか」

ため息をついて、背中を見送る。

「あら? 野中くんって、音和ちゃんのこと本気なんですか?」

「そうなのチュン太?」

あ、3年生チームは知らなかったのか。

口を尖らせながら頷いて肯定しておいた。

「んん。でも野中くんってよくわかんない」

「あいつあれで本気で言ってんだよな……」

知ってるはずのいちごもそう言うくらい、あいつの場合、ギャグだ。照れてるんだと思うけど。

野中が二人の間に割ってって行き、音和に押し戻されそうになっているところが見えた。

「じゃああたしは次育だから、早めに戻るわね」

凜々姉が立ち上がる。

「私ももうしゆっくりしたいのですが、凜々子さんと同じく育ですので」

「殘念。ごきげんようですね」

「はいトモくんいちごちゃん、ごきげんよう」

眩しいかよ。

二人揃って、はしごをおりて行ってしまった。

んで結果、いちごと二人になった。いちごもそれに気づいたみたいで、そわそわしながらうつむく。

會話が止まって、獨特な空気が流れる。

このじが嫌とかじゃないけど、金曜日のことちゃんと話したほうがいいよな。今二人きりだし。うん。

「あのさ」

切り出すと、まるで験の合格を待つ中學生みたいな面持ちでいちごが顔を上げた。なんだか申し訳なくなるくらいに、切羽詰まった顔だった。

「……この前のこと、なんだけど」

と言いつつ様子を伺ってみる。

顔が真っ赤になったと思ったら、みるみるうちに泣きそうな表へと変わって行く。

え、あれ。

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