《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/3(火) 日野 苺②

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「野中は來てないけど、だいたい揃ったから本題にっていいですか?」

スマホはビデオオンライン狀態でテーブルの上に立てかけていた。畫面には虎蛇のメンバーがひとりひとり映って雑談していた。

「誰か、いちごが前にいた高校を知ってる人はいない?」

全員に向かって聞いてみる。さっきまでにぎやかだったビデオメッセが、一気に靜かになった。

『……えーっと。それ、どういう意味?』

七瀬が顔を引きつらせながらたずねてくる。ほかの畫面のメンバーも、小さく頷いて俺の答えを待っていた。

「……ストーカーしようかなと思って?」

『おばか』

すかさず凜々姉がツッコんだ。澄まし顔だけどあなたの後ろ、いろいろ映ってますよ、ファンスタグッズ……。

まあ、理由を話さないのも変か。

「俺さ、いちごのことをわかりたいと思ったのに、そもそもなにも知らないって気づいて。もう何カ月も一緒にいたのに。最低だよな」

っぽく笑ってみせるが、みんなの顔は曇るだけだった。

『いや。確かにあたしたちも……』

『長で料理好きってことは知ってるけど、いっちーがどんな暮らしをしていて、どんな友だちと遊んでいて、何が苦手で何で喜ぶとか。よくわかんないかも……』

『あたし、日野さんに何かしてもらってばかりだ……』

凜々姉、七瀬、音和。一様に肩を落とした。

『……いちごちゃんに何かあったんですか』

深刻そうな聲で、詩織先輩が聞く。俺は首を軽く振って、

「それがわからなかったんだ」

と答えた。

『……あたしは聞いたことない』

音和はそう言いながら、首を振る。

『なんかクラスで、前の學校の話になったことがあったような……? でも聞きなれない學校名だから忘れちゃった』

と、七瀬も続いた。

『いちごちゃんって、しばらく前の制服著ていましたよね? それで県の學校の制服と照らし合わせることはできそうですけど……』

詩織先輩の提案に、マグカップを両手で包んで暖をとりつつ凜々姉が言う。

『でもうちの県、高校200はあるわよ。それに他県かもしれないんでしょう?』

全員が渋い顔になってしまった。

『でも……本人の知らないところで過去に首をつっこむのは、あまり気分のいいものではないかな』

凜々姉、それはおっしゃる通りの正論です。だけどズバッと言われると心が痛いです。

「もちろんこれは俺が勝手にしているものだから、みんなには迷はかけないよ。調べるのも自分でやる」

正直、もう時間をかけられない。だから學校を休んででも、早めに片付けたい。

『あなたのところにはやっかいな話が集まりがちね。……いつものことだけど、まずくなる前には言いなさい』

「うん、頼りにします」

凜々姉が頷く。

ありがとう。

『あ! あたしいっちーが前の制服著て撮った寫真持ってる! 優勝じゃん、送るね!』

七瀬はピースするとビデオから消えた。

『あんまり無茶はしないでくださいね……』

心配そうな詩織先輩に笑いかける。

と、メッセージに追加メンバーの通知が鳴る。

「ん、なにしてんのこれ」

ぴょこんと畫面が追加され、あくびをしている野中がビデオ通話に顔を出した。

晝なのに完全に寢起き姿。つか寢起きでもイケメンってなんなの? なめてんの?

「あーごめん野中、もうだいたい話は済んだわ。いちごの前の高校がどこかをみんなに聞いてたんだよ」

「あー、集森だっけ?」

……。

みんなの目が點になる。

「は? いや、なんでお前が知ってんの……」

「5月ごろクラスで話してたろ。うちの親戚が行ってるところと同じだなと思って覚えてたってだけだけど?」

「なっちゃん、寫真アップしたー! って、學校わかったの!?」

「検索しましたが、集森高校の制服と寫真のいちごちゃんの制服、同じですね!」

七瀬の寫真と、先輩の送ってくれた集森高校の制服寫真と比べる。

點が線になった瞬間だった。

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