《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/3(火) 日野 苺④
「あたしは野中みちる! たっくんのいとこで、同じく高2です♡」
目立つからと場所を変え、自転車置き場に連れてこられた俺の前には、野中の腕を組んで満面の笑みのみちるがいた。
(ごめん……。話聞けるまでは我慢して……)
(覚えとけよ知実……)
アイコンタクトでそんな會話をわす。
あれからあまりにも俺を目の敵にするので、ただの友だちだとバラしてやっとみちると會話が立するようになった。機嫌を損ねないようにと、目の前のの子に想を振りまく。
「みちるに聞きたいことがあるんだけど」
「誰が呼び捨てていいつった?」
「……すみません、みちる……さん……」
「みちるちゃんでいいよ! で、なに?」
男ももだいたい呼び捨てしてたからめちゃくちゃビビった。俺ってば作法間違えてたんだな、気をつけよう……。
「日野って知ってる?」
「日野? ううん、しらなーい!」
にこにこ無邪気に即答する。
「日野苺。1年のときここにいたはずなんだけど」
下の名前を言った途端、彼の表が変わった。
「いちご……。ああ、あの子そういう苗字だったな」
ぽつりとこぼして、不安そうに野中をちらりと見上げた。
「いや、あたしはクラス違ったし、接點はないんだけどね。いちごって名前は珍しいし、あたしはなにも関わってないんだよ……」
どうにも挙がおかしい。
「関わってないって、なにに?」
「え。んー……」
返事も歯切れが悪く、もどかしかった。
「今さ、彼うちの學校にいるんだよ。俺たちと同じクラスで」
「えっ!?」
みちるの顔が青くなる。
「なにか……その、言ってた?」
「いや、何も。だから俺たちが勝手に來た」
「え、でもあの子のために? なんで? だってここまで來るのも、1時間以上かかるでしょ。なんでたっくんまでこんなことしてるの?」
理解できないとばかりに頭を振る。
「なんでって。友だちだし」
當前のように言う野中に、普通に驚いた。
そういう風に思ってたのかと、うれしくてニヤニヤが抑えきれない俺に対し、みちるは愕然としていた。
「だって、たっくんが誰かのためになんていたことないじゃん! 従姉妹のあたしにすら塩対応だし!」
なに言ってんだろこの子。野中は全然そんなことないぞ。
「あーうっせ。だから、日野は友だちだからだよ!」
「だから、なんであんな子が友だちなの……」
「OK野中、そいつ黒だ。やましい。生け捕りにしていこう」
「キャーー!! ちがっ、あの子が學校出てったのは自業自得なんだよ! それに、迫ってたのは別の子で、あたしはなにもしてないっ!!」
野中にぎゅっとしがみつくみちるの言葉を聞いて、俺たちは顔を見合わせた。
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