《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/5(木) 小鳥遊知実②

「いい天気だし。のんびりしようぜ」

いつもの場所で転がりながら野中。今日は気溫も高いから、寒さは気にならない。

「なっちゃん、もう今月だよな」

「うん。遅くても16日に完全院ってさ」

「……あと10日くらいかぁ」

普通に接してくれているけど、野中の聲は震えていた。

「あとさ、ごめん。お前が言ってくれてた未練、殘すのはやめることにした。……いちごの告白斷ったんだ」

「それで本當に良かったの? あんだけ日野のためにいておいて?」

「そもそも好かれるためにやってないしね。それに、俺にはお前と音和がいるから」

「そっかぁ」

野中は目に腕を當て、しばらく靜かにしていた。

「……病院には行っても?」

「多分、面會は大丈夫だと思う」

「痩せたよなあ」

「あ、それは凜々姉のせいだわ」

軽口を叩いてみせるが、野中はクスリともせず空を眺めて黙っていた。

「……なあ、俺のことも話していい?」

ふと野中が口を開いた。

意外と真面目な口調だったから、黙って続きを促した。

「死ぬほど最低な話なんだけど、英語の教師と関係を持たされてるんだよね」

「は??」

英語って、音和の擔任? そういえば野中、あの先生の授業休むこと多いけど……。

「でも俺、マジで音和が好きだから。だからもういい加減なことしたくないんだよ。もう、あの人に呼ばれたくない……」

腕で顔を隠して、絞り出すような聲だった。

「ごめんなっちゃん。こんなの話さなくていいことだよな。軽蔑だよなぁ」

「いやいや、話していいやつだよ! つか、気づかずにごめん!! 知らずに可いとか言ってたし。俺、今まで自分の話しかしてなかったよな……」

俺はいつも相談してたし、頼らせてもらったけど。こいつは誰にも言えずにずっと抱えていたのかよ。

そういえば早朝に校門でばったり會ったとき、そのまま1限も出ないで帰ってたことあったよな。明らかに様子がおかしかったのに、あのときなんで話を聞かなかったんだ。

いちごのこともそうだけど、俺、視野狹すぎだろ。

「俺は何か、できる?」

「いや、自分の問題だから。なっちゃんが學校にいる間に決著つけるわ。っていう意思表示っす」

二人の間にどういうやりとりがあって、これから野中にどんな代償があるのかは想像できない。けれど、野中は立ち向かうつもりだ。

「でもこんな俺、もう純とか無理だろなぁー」

心底苦しそうに聲を振り絞る野中。

そんなことない。それでもお前が音和に向けていた好意は、ちゃんとそれだった。

「俺は味方だから。お前がなにやっても、どんなヤローだとしても、最後まで俺の一部だよ」

「いやあー泣かせないでよね」

高い空に目をやる。

野中の過去も痛みも全部、持って行けたらいいのにと思う。

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