《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/9(月) 小鳥遊知実②

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「えーーーー! なっちゃんよかったねー、大事にしなよー! いっちーもよかったね、逆転劇じゃーん!」

「ありがとう七瀬ちゃん」

「はー、それでほづみんが來てないのかぁ……」(ぼそり)

晝休みになってから、2年の虎蛇メンバーに屋上で報告をした。

子を給水塔の下に座らせて、俺は海を背に座っていた。隣に座っていた野中はなにか喚いたりいじってくるかと思ったけれど、ひとこと「オメデト」と言ったきり、めし食ってるだけだった。

違和を覚えつつガン見していると、野中がウザそうに立ち上がる。

「ジュース買いに言ってくるわ……。日野、お祝いになにか買ってやるからおいで」

え!? 俺じゃないの? なんでいちご?

「えっと……」

いちごはみんなの顔を見回してから、

「うん、買ってもらおっかな!」

と立ち上がって、野中について行った。俺と七瀬が取り殘される。

「なんでいちごなんだ?」

「なになにー? ヤキモチー? 彼氏っぽいじゃーん!」

「そういうんじゃないよ! そういうんだけど」

七瀬はニヤニヤしつつ、隣に座ってきた。距離が近いのが気恥ずかしくて、し橫にずれて座り直す。

「なっちゃんは〜いつから〜いっちーがいいなって思ってたんですか〜?」

七瀬が手をマイクみたいにして突き出してくる。

「そういうのは言いません〜」

「えーー! あたしのは散々聞いたくせー!」

「お前は自分で勝手に話してたんだろ!」

「ひどーい!」

七瀬が育座りをしながら膨れる。膨れてかわいい子ぶっても、絶対に言わねえ。

「なっちゃんは年上なのかなと思ってたんだよなー」

からかうような口調で言われて、むっとする。

「だから、凜々姉のことは終わってるって」

「え、なにそれ、聞いてない」

「! 墓った!?」

最悪だ……。口元をおさえて無になる。

「ふーん? 會長といっちー、全然タイプが違うけどー?」

「……」

寄りかかって來る圧に震えながら、答えない姿勢をつらぬく俺。

「……じゃあさ、あたしはどーだった?」

「んっ?」

ふっと圧が消えた。

七瀬は腳の間に顔を乗せて、にっと笑って見上げてきた。

「あたしのことは、どう思っていたのか聞かせてよ〜」

え、それ本人を前に言うの?

ドキドキと鼓が早まるのをじる。七瀬のことは、いくらでも思うことがあるから。

「……お前さ、俺と一緒に山掘ってたときも、野中しか眼中になかったよな。あれがすっごくいいなって思ったんだ。心、頑張ってるの俺だけどって嫉妬もしたけど」

「えっ……」

「七瀬がいると場が明るくなるし、みんなお前のこと好きだし。一緒にいて楽しくて気持ちいいよ。いちばんの友だち……ってやつじゃない?」

にやりと笑って見せると、七瀬は前を向いた。

「ふふん〜。そっか……。ふふ〜。いちばんの友だち。うん……」

何か納得させるようにつぶやいていた。だから、その橫顔に問いかける。

「で。お前はないの? 俺に」

七瀬は前を向いた姿勢のまま、ちらりと橫目だけ移して口元をニヤリと釣り上げた。

「んー。“むっつり”じゃん?」

「ひどい! しかもたった4文字かよ!?」

「あっははは! なっちゃんなんかぁ、4文字で充分っしょ!」

楽しそうに、ピンと背中を正して。

「だ い す き ! ほらね4文字っ」

「!」

「うん。大好きだよ。いちばんの男友だちとしてねーっ!」

らしい晴れやかな笑顔を、惜しげもなく俺だけのために向けてくれた。

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