《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/9(月) 小鳥遊知実③

放課後は虎蛇會室にて、俺といちごは凜々姉と詩織先輩の前に並んで立っていた。

「えっと……俺たち付き合うことに、なりま……え、なにこの空気」

七瀬は窓際の小さな機に腰掛けてあからさまに窓の外へと目を逸らし、凜々姉の斜め前に座った詩織は笑顔で無言のまま。會長席の凜々姉に関しては、背後にどす黒いオーラが見える。

あれ、そんなに意外だったのかな?

反応がわからずにおろおろしていると、凜々姉が明らかに無理した表で口を開いた。

「えっと……じゃあ……とりあえず、なれそめ……とか……聞いておいたほう……が……?」

「え、かいちょー、それ聞く!? 死ぬ気!?」

七瀬がつっこんだ。

なんで俺のなれそめ聞いて死ぬんだよ! 失禮だな!

はあ。と、凜々姉は大きくため息をついて、組んだ手にあごを乗せた。

「まあでも、二人ともお似合いよ。おめでとう」

あ、普通にうれしい。

「ありがとう。でも見てわかるように、だからと言っていつも通りなんで。あんまり気を使わないでくれたらうれしーです。一応報告ってことだから」

また凜々姉は大きくため息をついた。そしてふと部屋を見回す。

「そういえば、今日は穂積は?」

「あーほづみん、しばらくいろいろあるのでは……」

「チュン太、あんた罪重いわよ」

えー! さっきは祝ってくれてたのに!?

「なんで? 浮ついた話が全然ない俺が、さっさと片付いて安心でしょうが!」

「あはは〜。なっちゃん、會長にトドメをさすのはやめたれや〜」

乾いた笑いを見せる七瀬に、能面の凜々姉。相変わらず笑顔のままかない詩織。今日の虎蛇は、なんだか殺伐としていた。

………………

…………

……

異様な空気の虎蛇を出て、二人で帰る。

バイトのあるいちごとは違い、暇な俺は殘ってもよかったんだけど、みんなに「彼を送りなさい」と追い出されてしまった。

「気を使うなって言ったのに……」

「まあ、うん、仕方ないよ。でも知実くん、みんなに話してよかったの?」

虎蛇ではほとんど話さず合わせてくれていたいちごも、靴箱を出るころになってようやく喋ってくれた。

「うん。だって人前でイチャイチャしたいじゃん」

「えっ!?」

「えっ!?」

真っ赤になってあわあわしはじめる。えっ、そういうんじゃなかった!? 俺、やっちゃった系!?

「あでも、付き合うって。思ってたよりも普通なじだった、かも」

「そ、そっすね」

話を軌道修正しようとしているのが伝わってきた。またセクハラって言われるやつかな、すみません。

でもさー、付き合ってるんだしー。

「手でもつないでみます?」

「ヒェッ!? は、はい」

なんだよその聲。おかげでこっちは落ち著いてきたわ……。

學校の人たちに見られていても気にせず、今度は人つなぎで帰路につく。

この判斷が正しかったかはわからない。けど、まだ生きている俺が一杯できることをいちごへ殘したいと思った。

「……なにも変わらないのかなって思ってたけど。今は前以上に知実くんが近くにじて、すごくうれしいよ」

前を見據えたまま、いちごがつぶやいた。

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