《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/10(火) 小鳥遊知実

ハッとして目を開けた。

この殘念は、RPGゲームでギリギリまで回復せずに粘り、普段なら倒されないようなザコ敵にやられて前の宿からのリスタート。っていうじかな。

……うーん、全然いいじの比喩になってない。0點。

はい、普通に倒れたっぽいです。

ぽちっ。

ナースコールを鳴らしてすぐに、エミちゃんが様子を見にきてくれた。

「なっちゃん、おはよ〜」

「今日って何日? 今何時?」

「10日ですよ〜? 21時半です」

「結構寢てたんだね……」

おそらく記憶では、9日の夜、リビングでテレビを見ていて頭が痛くなったという認識……。

「そですよ〜。調はどうですか??」

「寢起きでぼんやりってじかな。ちょっと様子見てみる」

「おっけー。なっちゃんちょっとシリアスだから、あとで先生と話してね〜」

「うう。了解〜」

次倒れたら強制院って言われてたもんな……。

あー、なんでー。やっちまった〜。

20分後、原さんが來てくれた。軽く健康チェックしたあと、隣の丸椅子に腰掛けた。

「ちょっと早いけど、仕方ないわね?」

念を押されたので、しぶしぶ頷いた。もう病院から出られないということだ。

結局これが俺の現実か。ここは靜かすぎて気味が悪いんだよなぁ……。

「ご両親にもあとで話すけど、先に確認しておくわ」

ぼんやりしようとするのを阻止するように、原さんの聲が強くなる。仕方なく、原さんのほうに向き直った。

「小鳥遊、まだ手しない気持ちは変わらないの?」

「……あれ、むしろまだ手するっていうカードあるの?」

「まったく、君は人の話を聞いていないわね……」

非難の目を向けられて居心地が悪くなる。

いやあ、まあ。しない一択だったから聞いてないよね。でも一応、ごめんなさいのつもりで頭を下げた。

「君のは時限弾みたいなもので、5月時點で見積もり半年だったけど、どうやらまだ力もあるみたいだし。現時點の狀況的には、手はできる」

ここに來て、まだ手って道もあるのは驚いた。

「そっか。うん。……でも、手はしなくていいよ」

一瞬、言いよどんでしまった。

けど、手後のことを改めて考えるとやっぱりデメリットが大きすぎて、頭に浮かんだ希をすぐに打ち消した。

「そう」

そんな曖昧な答えに、原さんは表を崩した。

「ふふ、即答じゃないのね。頑なだった君に何か心境の変化があったなら、待っていたかいがあったわ」

原さんは席を立ち、じっと俺の顔を見た。

「16日を目処めどに、最後の答えを出してみましょうか。……醫者が患者にこんな不確かなこと絶対に言っちゃだめなんだけど、小鳥遊。あたしはあなたが、全てを克服するんじゃないかって、どこか期待してるのよ」

さっぱりした笑顔を見せて、原さんは背中を向けて出て行った。

俺は原さんの言葉をぼんやりと反芻する。全てを克服……。本當にそうなるなら、どれだけ幸せだろうか。

だけど俺、言わなかったけど、今まで結構いろいろ無茶してきたからか、最近、今まででいちばんきつくて。薬を飲んでも常に頭痛はまとわりついていて。もうダメなんろうなって、自分でもわかってる。

現実は、小説のようにうまくいかないと思うよ。

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