《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/12(木) 小鳥遊知実①

無料案

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今日は18時くらいに行く

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15:32

今日は野中は遅めか……。用事があるのかな。來てくれるのはうれしいけど、自分の人生も大事にしてほしい。

了 解 。 無 理 せ ず 。っと。

部屋のノックに返事をしながらスマホから顔を上げると、「やっほー!」といちごがってきた。いつも元気でなにより。

今日のいちごはバイトが休みで長く滯在できるらしい。自分の調も悪くはないから、ロビーへとった。

「うわー、高臺だからすごいね。海遠いけどしっかり見える!」

ガラスの窓に張り付いていちごがうれしそうに聲をあげるのを、後ろのソファから微笑ましく眺めた。

に自分の好きな場所を見せたかったっていうのはあるけど、思っていた以上にいいリアクションを見せてくれてかなりうれしい。いちごが振り返る。

「あはは知実くん、本當に好きなんだね。やっと笑った〜!」

「いやいや、お前が子どもみたいだから」

「え、こんなナイスなレディーに向かってそういうこというんだ?」

「笑わせるのやめて、腹痛い!」

のこういう部分に、すごく救われてるなと思う。

そのあと、し院を散歩した。じーちゃんズにもあいさつして、看護師さんに冷やかされたりして。部屋に戻ってきたころには、もう外が暗くなっていた。

「ってか、いちご自転車だよな、ごめんね遅くなって」

言いながらベッドに腰掛けると、いちごは首を振って隣に座った。

「ううん! 日が落ちるのが早すぎるのが問題!」

ぶーぶーと拳をあげて抗議していた。あははと笑っていると、ふと彼が真面目な顔つきになる。

「あのさ、知実くん」

腕を下ろし、指をスカートの上で組む。

「これからどうするつもりなの? ずっと聞けなかったけど……そろそろ、どうして手をしないのかとか、聞いてもいい?」

明るく振る舞おうとはしてくれてたけど、聲のトーンは落ちていた。

必ず暗い話になるからずっと避けていた本質の話題。

「うん。俺も話そうと思ってたんだけどごめん、先に言わせて」

いちごは無言で首を振った。

「……手さ、まだけるっていう選択があるんだって」

「えっ、じゃあ……」

「でも功率70%という微妙なじで、功しない可能もある。最悪、俺そこでデッド。もうひとつの心配は、言ったけど高確率で記憶がなくなるんだって。そんな病気あんのかよってじだけどそうらしいから仕方ない。俺の神デッド」

できると聞いていちごの瞳に一瞬が宿ったけど、すぐにそれは消えてしまった。

「さらにもうひとつ。功してからも5年もつかどうからしい。マジで終わってるよなあ」

真っ白でなにもない天井を見上げる。俺の未來もこれくらい自由に描きやすそうならいいのに。

たとえうまく生きびることができも、その後は手れされていない古く長い吊り橋を、目隠しして歩くような人生が待っている。

「現実は厳しいから、全部手にれて大功なんて無理だよ。俺、いちごと初めて出會ったころから手はしないと決めてたんだ。だから辺整理のつもりで、無茶してきた」

俺の世界のなかで、一杯悔いのない人生を走ったつもりだった。だけど……最後の最後で急に世界が広がってしまった。

人を好きになると張りになる。ずっと自分のは見ないようにしていたから、ここに來てそれがガツガツ前に出てきて、本當にしんどい。

「だけどさ、こうやっていちごのことを好きになって、もしうまく記憶があるまま生き延びたら、いちごと一緒にいたいなーとか思っちゃうんだよね。その反面、記憶を失った自分にいちごを取られたくないって嫉妬とか、そうなった自分がいちごを傷つけないかっていう不安とか。いろいろ考える」

いちごの手がびて、袖を引く。その手を捕まえて握り締めた。

「エピソード記憶がなくなるから、赤ちゃんみたいになることはないらしいけど。でもわかんないよなそんなの、なってみないと。……怖いんだ」

薄くて小さい手のあたたかさが、しくて。失ってしまう未來が、哀しい。

「……月曜までに決めてって言われてる。手するのかしないのか」

「! 4日後?」

「きっと、俺の考えは変わらないと思う」

ふらりといちごの肩に頭を預ける。

せめて今が永遠だといいのに……なんて。柄でもなく使い古された戯言を思ってしまう。

「……そっか」

いちごが小さく息を吐いた。

「知実くんの考えはわかった……。あたしができることがあったら、言ってね」

「ん。充分。こうやって甘えられるのもいちごだから」

「うん……」

の流れに耳を傾けて、靜かに時間をじる。充分に幸せだから。大丈夫だから。

自分にそう言い聞かせるように。頬からじるぬくもりに、神経を集めた。

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