《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/12(木) 小鳥遊知実②

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「じゃあ、また明日ね」

病室の扉を閉めて、を噛む。

言えない。生きてほしいなんてあたしのエゴ、押し付けられない。

でも何か……あたしにも何かできないかな。知実くんにとっていちばんいい答えを、ギリギリまで一緒に考えたい。

だってあたしたちには無限の選択肢がある。可能は0と言い切れないなら、諦めずに知恵を働かせれば見つかるかもしれない。

うん、あたしにだって、絶対にできることがある!

よし、と気合いをれ直して帰ろうとして、ドアの隣で野中くんが壁に背中を預けて立っているのに気づいた。

「あれ、野中くん?」

「おう、お疲れ」

「うん……またね?」

野中くんはてくてく歩いて、病室をノックしてって行った。

……今日あたしがバイト休みって言ったから、気を使って遅めに來てくれたのかな。

柊と杏も待たせていて心配だし、気になったけどそのまま病室を後にした。

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「遅くなったー」

「よっす野中。今いちごが帰ってったとこだよ」

「そこですれ違ったー。まぁ、ラブラブですこと」

「あら妬かないで。男の中ならお前がいちばんだから」

「知ってる」

ペットボトルのお茶を腹に投げられる。

それからベッドの下にかばんを放り投げて、野中は丸椅子に座った。

野中は自分のスマホを出して、音楽をかけた。特に喋ることもなく、二人でそれに耳を傾けて過ごす。

この院から野中は學校の話をしなくなった。虎蛇がどうしているか気にならないことはないけど、そもそも顔を出してないのかもしれない。

「そういえば日野、深刻そうな顔してたけど何か問題あった?」

ふと思い出したように野中が口を開いた。

「あー。月曜までに、手についての最終決定を出してって言われた話をした」

「とうとうか。……え、ということは悩んでる?」

「いやいや。けない気持ちは変わらないよ。けど急に、実っていうのかな。怖くなってきたかも……」

布団に上半で寄りかかっていた野中が、ちらりと見上げてくる。二人とも黙り込んでしまった部屋に、音楽が響く。

けなければ、命ある限りは生きていられる。だけどいつ終わるかがわからない不安に怯えて毎日を過ごすことになる。それに、毎日來てくれてるいちごや野中、音和、両親にも負擔をかけさせてしまう。

そういうのが嫌だからって理由で、手の日を決めてしまったほうがいいんじゃないかという気持ちが出てきているのはある。

「怖いって思ってもらえて良かったよ。なっちゃん無理ばっかりするから。怖いという概念がなくなったのかと思ったわ」

「なにそれAIかよ。……でもAIでもいいから、俺のままで生きていられたらいいのになぁ」

「……それな。時代を恨むわ」

それから俺たちは特になにをするわけでもなく、しばらくぐだぐだと話した。そのなんでもない時間が、首を擡もたげてきた嫌な気分を紛らわせてくれた。

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