《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/16(月) 小鳥遊知実②
「あたし、こんなときこそ人として、彼として。大切な知実くんのために、なにができるかすごく考えてみたの。本當に、験よりも試験前よりも頭痛くなるくらい考えたの。でもね……そんなに考えても何もなかった。何も浮かばないの! だってあたしは何も手放すことないし、何も苦しい思いをしないんだよ!?」
一気にまくしたてたいちごの、苦痛にゆがんだ顔に手をばした。
頬をでると、すがりつくように両手で包まれる。そして、無力と苛立ちをまとったびは続く。
「っ、なんで知実くんだけがこんなにつらいのかな。付き合ってても、痛みすら分け合うことができないんだよ? じゃあ付き合うって何? こんなの全然意味ないよ!」
「……いいんだよ」
けれど首をふるふると振って下を向いた彼は、肩を何度か大きく揺らした。
彼の頬に添えた手を握り返してくる力が強くなる。
彼を引き寄せようとしたとき、ふと気配が変わったのに気づいた。
顔をあげた彼は、歯を食いしばって、涙をこぼさないように耐えていた。
「だけどねっ、知実くんには生きてしいよ! この優しく包んでくれる手も、い立たせてくれるも、守ってくれる腕も、思ってくれる涙もっ。まだ生きられるかもしれないあなたの細胞を、諦めてしくない! 知実くんに、知実くんを殺してしくないのっ!!」
きっと、伝えるのは怖かっただろう。それでも自分の意見を言ってくれた、彼の覚悟を表したような剣幕に息を詰めた。
俺が俺を殺す……か。そっか、そういう捉え方もあるのもしれないな。
いちごの腕を引いて、今度こそ抱き寄せる。
「ありがとう、たくさん考えてくれて。きつかったよね、土曜」
「っ、あたしなんかより知実くんのほうがっ」
「俺、伝えた気でいて、いちばん大事なことを伝えてないのに気づいたんだ」
「へえっ?」
顔を元にうずめたまま、彼の妙ちくりんな聲に笑ってしまう。
「あのね、俺が今まで自分らしく生きてこられたのは、いちごのおかげなんだよ。余命を伝えられて屋上で絶してたときにさ、俺のおかげで楽しいって言ってくれたから、大事な人たちのために生きようって思い直したんだよ」
「っ……うんっ」
「余命とか言われる前は俺もずっと無気力で、學校でも適當だった。でもいちごのおかげで毎日が明るくなったんだ。頑張ろうって思っただけで、世界の見え方が変わったんだよ……!」
虎蛇で、うまくやれるか自信がなかった。
けど、やるしかないと思ってから、どんどん人を巻き込むことができた。
「いちごがいなかったら、あのとき心が死んでたかもしれない。だから、あれからしい時間をくれたいちごに前向きな気持ちで俺の殘りの人生あげるわ! 手後の知らない俺にお前を取られるのは嫌だったけど、『俺が俺を殺す』って。ちょっと効いた」
「知実くんっ……」
「それに、全然イチャイチャできなかったしめっちゃ心殘り」
「っ、もう、イチャイチャしようね! 回復するのを毎日祈る! あたし、いつまでも待ってるから!!」
「やだよ」
顔をあげるといちごと目が合った。
冷たいものが頬に落ちて來て、そのまま手で顔を包まれ、キスをした。
何度も、何度も。お互いを確認するように。
生きてるし、溫かい。
この時間は確実に夢じゃない。
これが最後にならなければいいのに。なんて、持ちたくなかった希を持ってしまった。
夕方、俺は手をけると伝えた。
ドクターが東京で手をしたいと言い、2日後、俺は朝ヶ浜を出ることになった。
【完結&感謝】親に夜逃げされた美少女姉妹を助けたら、やたらグイグイくる
※完結済み(2022/05/22) ボロアパートに住むしがない28歳のサラリーマン、尼子陽介。ある日、隣に住む姉妹が借金取りに詰め寄られているところを目撃してしまう。 姉妹の両親は、夜逃げを行い、二人をおいてどこか遠くに行ってしまったようだ。 自分に関係のないことと思っていたが、あまりにも不憫な様子で見てられずに助けてしまい、姉妹に死ぬほど感謝されることとなる。 そこから、尼子陽介の人生は大きく変わることになるのだった――。
8 1056/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~
書籍化しました。小學館ガガガブックス様よりロメリア戦記のⅠ~Ⅲ巻が発売中です。 コミカライズしました。ロメリア戦記のコミックがBLADEコミックス様より発売中です。 漫畫アプリ、マンガドア様で見ることができますのでどうぞ。 「ロメ、いや、ロメリア伯爵令嬢。君とはもうやっていけない。君との婚約を破棄する。國に戻り次第別れよう」 アンリ王子にそう切り出されたのは、念願の魔王ゼルギスを打倒し、喜びの聲も収まらぬ時であった。 しかし王子たちは知らない。私には『恩寵』という奇跡の力があることを 過去に掲載したロメリア戦記~魔王を倒したら婚約破棄された~の再掲載版です 私の作品に対する、テキスト、畫像等の無斷転載・無斷使用を固く禁じます。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
8 190シスコンと姉妹と異世界と。
高校3年の11月、都心で積雪が記録された。 草場翔一(くさばしょういち)は天気予報を観ていたのにも関わらず傘を忘れ、同じ學校に通う妹と2人で帰路に著いた。 そこに、雪混じりの路面に足を取られたクルマが突っ込み、翔一は妹の枝里香(えりか)を庇う形で犠牲に。 まっさらな空間の中で意識が覚醒した翔一は、神を自稱する少年から、自分が、妹・枝里香を庇って死んだことを思い知らされた。 その後、事務的説明の後にそのまま異世界へと放り出されることになってしまったのであった。 條件付きでほぼ死なないという、チートな力を持たされたことと、最後の最後に聞き捨てならない言葉を口添えされて……。 あまり泣けないけどクスッとくる日常系コメディ爆誕ッ!!
8 157異世界転生の特典は言語理解EXでした〜本を読むだけで魔法習得できるチートスキルだった件〜
主人公のアレクは、言語理解EXという特典をもらい、異世界転生することになった。 言語理解EXをもらったアレクは幼少期から家の書庫でたくさんの本を読み漁る。 言語理解EXの能力は、どんな言語でも理解してしまう能力。"読めるようになる"ではなく、"理解してしまう"能力なのだ。つまり、一度見た本は二度と忘れない。 本を読むだけで魔法の概念を理解してしまうアレクは、本を読むだけで魔法を習得できてしまう。 そんなチートスキルをもらったアレクは、異世界で二度目の人生を送る。 ほぼ毎日投稿。悪くても3日に1回は投稿していきたいと思ってます。
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のどかな自然に囲まれて--- 小さな街の「After-eve」というパン屋を中心のヒューマンストーリー
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