《小さなヒカリの語》2ページ目
より康介、ちゃんと支度は済んだんでしょうね?」
母さんの呆れたような聲が一階から聞こえてきた。階段の手すりから顔を出すと、母さんが一番下の段に足をかけ、こちらをじろりと睨んでいた。しかしそれだけじゃ怯まない。待ちに待った日、それが今日ということで、俺は朝からテンションが高かった。ここで退いたら男がすたる。後悔先に立たずだ。今やるだけやっとけやいとばかりに強気に出る。
「俺様を誰だと存じ上げる! 日本が生んだスーパースター、柊康介であらせられるぞ!」
ざしゅっ。
ん? なんか飛んできた。あれ、鼻からぽたぽた赤のが流れて……
「いつまで寢ぼけてんの! 支度が出來てるなら、早くご飯を食べてちょうだい。洗いが出來ないじゃないの!」
「うぉぉお! 痛ってぇー! うわっ、が出てきた。しゃもじって、ちょっ!」
「あんまりぐちぐち言ってると朝ごはん抜きにするからね」
「息子の顔を普通狙うか!?」
「何? なにか文句あるの?」
母さんの鋭い眼が反抗する気力を失わせる。仕方無しに俺はぐっとつばを飲み込み、
「……すいません。許してください」
急激に勢いを削がれ、鼻の頭を押さえながらしぶしぶ階段を下りた。
テーブルの上のティッシュ箱から紙を二、三枚引っこ抜き、鼻の中に突っ込む。
……まさか朝から人を殺す勢いでしゃもじを投げられるとは思わなかった。地味に痛い。。
と、黃の熊さんがプリントされた赤いエプロン姿の母さんは俺に気づき、
「あらまだ著替えてなかったの? 支度が済んでからって言ったでしょ。ほら、早く著替えてらっしゃい」
またいつもの小うるさい指示をしてきた。
あれ、今日から俺は……そっか、まだ違うのか。約束はまだし先なんだ。
早く降りてこいって言ったのは誰だよ、と言い返そうとするのはやめ、ここは思い踏みとどまった。
余計なことを言って約束を反故にされたら困るからな。
何を隠そう今日は俺の待ちに待った高校の學式。
世の年が大人へ一歩近づいて、責任とある程度の自由を戴冠される大事な日だ。
制服のボタンを留め終え、保険証のコピーなど必要なものを確認して、よし準備萬端。
ハム、レタス、チーズ、トマト、目玉焼きをパンに挾み、胃袋に強引に押れ、水分もたっぷりと補給して今日も好調だ。早く家を出ようと靴のひも結びに努める。朝は特にお小言が多いからな。
と、母さんは俺の顔にしゃもじを突き出し、
「パパの仏壇はちゃんと拝んだのかしら?」
ぐりぐりと頬をえぐってくる。
「あっ」
【第二部完結】隠れ星は心を繋いで~婚約を解消した後の、美味しいご飯と戀のお話~【書籍化・コミカライズ】
Kラノベブックスf様より書籍化します*° コミカライズが『どこでもヤングチャンピオン11月號』で連載開始しました*° 7/20 コミックス1巻が発売します! (作畫もりのもみじ先生) 王家御用達の商品も取り扱い、近隣諸國とも取引を行う『ブルーム商會』、その末娘であるアリシアは、子爵家令息と婚約を結んでいた。 婚姻まであと半年と迫ったところで、婚約者はとある男爵家令嬢との間に真実の愛を見つけたとして、アリシアに対して婚約破棄を突きつける。 身分差はあれどこの婚約は様々な條件の元に、対等に結ばれた契約だった。それを反故にされ、平民であると蔑まれたアリシア。しかしそれを予感していたアリシアは怒りを隠した笑顔で婚約解消を受け入れる。 傷心(?)のアリシアが向かったのは行きつけの食事処。 ここで美味しいものを沢山食べて、お酒を飲んで、飲み友達に愚癡ったらすっきりする……はずなのに。 婚約解消をしてからというもの、飲み友達や騎士様との距離は近くなるし、更には元婚約者まで復縁を要請してくる事態に。 そんな中でもアリシアを癒してくれるのは、美味しい食事に甘いお菓子、たっぷりのお酒。 この美味しい時間を靜かに過ごせたら幸せなアリシアだったが、ひとつの戀心を自覚して── 異世界戀愛ランキング日間1位、総合ランキング日間1位になる事が出來ました。皆様のお陰です! 本當にありがとうございます*° *カクヨムにも掲載しています。 *2022/7/3 第二部完結しました!
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