《小さなヒカリの語》20ページ目

それ以外は必要のないことなの」

その言葉に素直に頷くことは出來なかったが、これで話が終わりそうな予がしたので、最後に一つ聞いてみることにした。これこそ拒まれる質問かもしれないが。

「……じゃあ、せめて名前を教えてくれよ。君はいったい何者なんだ?」

「分からない……かな?」

どこか懇願するような表で見つめてくる。寂しげに青い瞳が揺れる。

「は? 初対面の人の名前を俺が知るわけないだろ? 俺は死神の目なんて高尚なもの持ってないぞ」

俺の言葉には殘念そうな顔をする。俺が知らないってだけでなんでそんな顔をするんだ?

「うーん。こーちゃんなら気づいてくれると思ったんだけどな。仕方なし」

「ん? こーちゃん?」

いつからそんな間柄になったんだ? というか名前はまだ名乗ってすらいないのに何で知ってるんだ? こーちゃんと呼ぶ奴にしばかり心當たりがあったが、目のも髪のも聲さえも違う。

だから、今俺が思い浮かべた人では決してない。あいつは田舎の學校に通っているはずだから。

じゃあ、こいつは誰だ? 必死に浮かんだ疑問を自分で否定していると、の長い髪が風でぶわっと舞い上がった。呼吸を靜かに整えるようには目をつむる。

すると、すぅーっと肩の力が抜け、長い髪はふわふわと浮きながらも、徐々に金から黒へを変えてやがて収まった。収まると同時には靜かに目を開く。

現れたのは黒い瞳。俺の知っている顔だった。

「お前もしかしてヒカリか!?」

「もしかしなくてもそーだよ。力解かなくてもこーちゃんなら気づいてくれるって思ってたのに。鈍なところは昔から変わってないね」

うんうんとどこか得意げな表馴染とは逆に、俺の脳は魚の切りと牛をミキサーでかき混ぜたくらい、ぐちゃぐちゃになっていた。

なぜヒカリがここにいるのか。なぜヒカリが剣を手に戦っていたのか、それについてさも當然のようにしていられるのか。いろいろと疑問點を挙げればきりがない。

「あれれ? どーしたの? 嬉しくないの? 長年連れ添った馴染との再會だよ? 小學校以來だよ?」

ヒカリはどうしたの?と俺の顔をぐいぐい覗き込んでくる。

……近い。凄く近いです。いくら馴染とはいえ、お互い年頃の男だし、つきもよくなって目立つところが凄く魅力的になってるし、いい匂いがするし、薄ピンクのを見ると、ヒカリがの子だということを俺にどうしようもなく認識させる。こんなに近いと思わずキスしてしまいそうだ。……っていかん。他に聞くべきことがあるだろ、俺。

「何でお前がここにいるんだ?」

冷靜になって考えてみろ。確かヒカリはお父さんの都合で近衛村っていうところに引っ越してたんじゃ。

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