《小さなヒカリの語》29ページ目

俺がしたいのは世間話とか思い出話じゃなくて。

「……え? あ、うん。私の話せる範囲でなら。もっとゆっくりして話しても良かったと思うけど」

神経の末端と中樞をつなぎ、脳という不完全な記録からその斷片的な記憶を搾り出す。

「あの怪の名前はオウムと言って、基本空間って言うのは俺らの住んでるこの世界だ。合ってる?」

たぶん合っていると思うが、一応ヒカリに確認をとる。

「うん。続けて」

ヒカリはこくりと首を振る。

「で、人間は基本空間に分子ってものを放出する。オウムは基本空間で放出された分子が異空間に移し、集合を形したもの。基本空間に現れて人間の生命を脅かす存在。ここまではどうだ?」

「おおまかに言うとそういうことだね」

「じゃあそこから先を聞きたいんだけど、まずヒカリの言っていた〝とうまし〟って何だ?」

「討魔師はオウムを倒すためだけに存在する古來からの部族の総稱なの」

古來からの部族? そんなの聞いたことすらないぞ。公には知られていないものなのだろう。

「ヒカリはその討魔師ってやつなのか?」

「そうだよ」

ヒカリはあっさり首肯した。寢耳に水だ。斷言されるとやっぱ衝撃は違うもんだな。

「俺といた時はそんな素振りさえなかったけどその時から知ってたのか?」

「そういう家系だって知らされたのは小學校を卒業してからだった。我々がしないと人々は危険に曬されるんだって、山奧にある討魔師育學校に通うため引越したの」

「あれってそのための引越しだったのか。あれ、じゃあ帰ってきたってことはその學校を卒業したってことか?」

ヒカリの眉がぴくっと反応する。

「ううん、実は4年制なんだけど、3年でも一応討魔師として認められるの。ほとんどの人は4年まで進むんだけどね。3年までを大學とすると、4年目が大學院ってじかな。あ、こーちゃんちょっと勘違いしてるかもしれないから言うけど、一応討魔師育學校にも普通教育はあるんだよ。違うのは晝すぎから夜にかけて訓練があるということだけ。休みの日は部活が出來るし、普通の中學校生活に近づけるように配慮はされてたんだ」

「晝から夜って的に何時から何時までなんだ?」

「……13時から23時までかな」

えっ? と俺の表筋がこわばる。全然普通の中學じゃない。スパルタにもほどがあるだろ。

その俺の様子の変化を見てヒカリはあわてて付け足す。

「あっ、でも今はその訓練のおかげで、この仕事に誇りを持ってるよ。自分にも持てるということを教えてくれたんだ。すごく謝してる。守られてるって実なんてないと思うけど人を守るってことは

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