《小さなヒカリの語》46ページ目

さんだ。

さっそく練習に必要な道を揃える。要るのは弓と矢とタオルと水筒ぐらいだろうか。

ちなみにだが、弓道場で練習の話はおじゃんになった。家の近くにある笠木原弓道場は、門下生の夜間レッスンのために場所が空いていないらしい。まずは練習する場所を探さないといけない。

「他に何か必要なものあるっけ?」

「どんな練習するかによって変わると思うけど」

「そうだな。何をしようか」

「……え? まさかと思うけど何も考えてなかったの?」

通信簿に書かれていた〝康介君は後先考えずに行することがあるので、事前に計畫を立ててみよう〟の呪い(有り難い忠告)が高校にあがった今でも俺を苦しめる。

「弓道場が使えないから、ある程度練習の自由が奪われるんだよ」

「……それなら私が一人前の討魔師になるためによくしてた練習やってみる?」

自分の計畫のなさに、なかば自嘲モードにりかけていた俺に天使の聲が聞こえた。

「そんなのがあるのか? やる。それ、やりたい。やらせてくれ」

ヒカリからそんな提案をしてくるとは思わなかった。討魔師になるためにしてた練習か。

強くなるための方法なら何でもいい。何もしないというのが一番いけないのだ。

ヒカリに練習場所の條件を質問し、話がまとまったところでそれに適した場所を脳サーチする。その場所に一つ思い當たる。テーブルに〝々散歩してきます〟とだけ書き置きを殘し、俺らはすっかり暗くなった外の世界に出発した。

「場所、人気のなさ、明るさ。うん、申し分なし」

家から一キロの護岸舗裝された河川敷は、思った通り練習するのに都合が良さそうだ。定期的に業者が除草しているため、足元にびる草は程よく短く、切れ掛かりの街燈も遠くからは見えないが弓の練習をする分には問題ない、やんわりとした薄暗さを提供してくれている。練習條件は悪くない。

「ここでしようか」

出來そうな場所は目星をつけていたから探す手間が省けてよかった。背負った中型の黒いケースから弓と矢を取り出し、ヒカリに準備が完了したことを告げる。

「やる前に一つ聞いてもいいか? その練習法ってのは……痛い……のか?」

うがった見方かもしれないが、討魔師になるためによくしてた練習という言葉からのファーストインプレッションは、きつい&痛いだ。自分でんだことなのできついは我慢するしかないが、痛いのはし悩む。出來れば人生の中で避けていきたい部分である。そうはいかない時もあるだろうけれど。

「これに當てるの。ほら、これ」

これ、と左手で指したのは頭上高く掲げた右手のもっと上。

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