《小さなヒカリの語》52ページ目

ヒカリは家から三百メートル離れた公園の前で足を止めた。昔ヒカリとかくれんぼや砂遊びをした思い出の場所だ。今もたまに英人たちと出かける際の集合場所として使っている。ヒカリは急にくるりと振り向き、俺のほうへと近づいてきた。

「矢を出して。力を注ぐから」

背中に背負っていたケースから矢を三本取り出す。準備に抜かりはない。必要そうなものは昨日のうちに全部揃えてある。

ヒカリの手のひらから、なんとなく生命を思わせる青々しいが出現し、矢に吸い取られるようにしてっていった。青々しい力だ。これで撃てるようになったのか?

「じゃあ、これで。けがしないでね」

そう言ってヒカリは元の位置に戻り、周りに人がいないことを確かめてから、空間に歪みを生じさせた。見るのは二回目なので、その非現実さに解毒剤は求めない。

ヒカリは慣れた足取りでそのの中にり、俺も急いで駆け込……もうとしたが、止まれのジェスチャーで急停車。ん? あ、そうか俺がったら意味がないんだ。

と、ヒカリの正面二十メートルのところにオウムの存在を発見した。濃い紫で、いかにも災厄をもたらしそうな毒々しい合い。周りの木々がより鮮やかに見える。

「……?」

眩暈がした。これはオウムを見たせいなのだろうか。何回か瞬きすると眩暈は治った。練習したのは昨日の一回のみ。覚悟はしていたとしても、だ。ほとんどぶっつけというのは流石に自信がない。

オウムはゆらゆらと抑揚をつけ、ヒカリに向かって凄い速さで猛進してきた。おとといのオウムとはまるでスピードが違う。あっという間に距離はまり、衝突する一歩手前でヒカリはを橫に投げ出した。

「くっ」

オウムの通った道の土は強大な力で削り取られ、その存在を暴力的に肯定する。こんな危険な存在が一空間向こうにいたなんて、と思う。討魔師がいなければ俺は生きてはいないし、そもそも文明が発達したのかどうかも怪しい。安全を提供してくれる存在がどれだけありがたいものなのか骨に沁みる思いだ。と、オウムによる二撃目がヒカリに襲來する。ヒカリはをばねにして攻撃を避ける。あの速いスピードについていけるのがすごい。さすが討魔師。戦闘になるとが軽くなったように見える。俺は弓に手をかけ、矢をセットした。もう心の準備は出來た。戦う武もある。なら、やることは一つしかない。

第一。ぎりぎりと弓を限界まで軋ませ、オウムに照準合わせて矢を放つ。青いは癇癪をおこした子供のように、音を響かせて大きく右に逸れてしまった。

「くそっ、力加減が難しい」

心が春風にでられて、しの焦りを生む。撃てる矢の數に制限があるので大切にしなければならない。

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