《小さなヒカリの語》53ページ目

「……大丈夫、まだあと二発ある。それまでに決めればいいんだろ」

瞼を閉じ、呼吸を整えて心の調律を図る。安定したところで目を開き、今の狀況を冷靜に確認する。まだヒカリはオウムの當たりを避け続けている。反撃は一度もしていない。斬るチャンスを虎視眈々と伺っているのかもしれないが、こういう時こそ俺の出番だ。

間違ってもヒカリに當てないよう、オウムがヒカリから離れたところを狙って今度こそ、行けっ!

「當たってくれーっ!」

今度は音控えめに鋭く尖ったが風を疾駆した。矢はオウムの橫をすり抜けて、どすっと公園のベンチに突き刺さった。惜しい。あともうしだったのに。

殘りの矢はあと一本。どうしたらいい? 俺は。一発目より軌道修正は出來たが、當たらなければ何の意味もない。次で當てないと、俺は何をしにきたんだってことになる。と、

「きゃっ」

オウムがヒカリの脇腹をかすめた。その聲がいっそう焦りに拍車をかける。

早く早く早く! 脳がヒカリを助けろと考えを巡らす。固定された的だったら簡単なのに。あぁーもう! じれったい! 止まれよお前! 気持ちが空回りして解決策が浮かばない。……認識が甘かったか? く的を抜くなんて、小中の練習メニューにはなかったし。

と、ヒカリは地面を蹴りだして剣を橫に薙いだ。ひしゅっと音をたて、オウムの下半分が削れた。しかしその部分は瞬く間に再生され、何事もなかったかのように振舞われる。

「……そうかっ!」

じっと見ていると規則こそないが、オウムのく軌道には必ず通る點があることに気づいた。ヒカリがいる方へ必ず向かってくるのだ。逆にそれを利用してヒカリ周辺に向けてれば。

……いや、流石にそれは危険だ。もしヒカリに當ててしまったら、俺は役立たずどころじゃ済まなくなる。

「でもっ……!」

何かしたい。しないときっと後悔する。ヒカリを手伝うと決めたのは俺だ。俺がここにいる理由を思い出せ。再確認する。それだけで十分だ。

「今だけは神様を信じてやる」

弓を限界まで軋ませ、タイミングよくヒカリめがけて矢を放つ。手元から離れていく矢の軌道はどんぴしゃだった。そして俺の思いをのせた一筋のは、ヒカリの前方まで迫ったオウムにそのまま突き刺さった。

「おっしゃあーー!!!」

これで戦いは終わる、ヒカリの手を煩わせずに自分の手で。そう思ってガッツポーズを決めるが、おかしい。オウムのきが止まらない。確かに當たったはずだ。當たったところを俺はこの目で見た。現に今も刺さっているのだ。止まらないはずが……いや、確かにオウムは止まらないが、きは格段に落ちた。ということは俺の矢は追い詰めただけで決定打ではなかったらしい。

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