《小さなヒカリの語》58ページ目

「……よし、帰るか。さすがにそろそろ帰らねぇと遅すぎだな。許可されたとはいえ、こんな時間にぶらついてたら補導される」

時間は現在夜の十一時。腕時計の針が休まずにいて、そう伝えてくれている。

今から帰って明日の準備をして、汗もかいたからシャワーを浴びたりすると隨分遅くなる。しっかり睡眠をとらないと、生活に支障が出たりして後悔することになるだろう。朝は特に弱いしな。

「練習に付き合ってくれてまじでありがとな。この練習これからもずっとお願いしていいか?」

「えっ……あ……うん、いいよ。一緒に頑張ろう」

ヒカリは最後に笑顔を添えてくれたが、時間は言ってないことまでも語ってしまう。

『いいよ』と言う前に、妙な間が空いてしまった。今ので分かった。ヒカリは俺を戦力とは見てくれていない。出來れば今日あたりにでも諦めてしかったんだろう。俺がまぐれでも當ててしまったから、そういうことは自分から言いにくいんだろう。

でも、そう思われるのは仕方のないことだ。ヒカリは三年間オウム退治の訓練をけてきた。厳しい訓練も多々あったはずだ。それを、何も知らない部外者に手伝うなんて言われても、首を縦に振ることはまず有り得ない。本人たちにしてみれば命をかけたぎりぎりの戦いなのだから。

そのことが分かっていても引き下がらないのはエゴのためだ。

俺としても諦めることはどうしても出來ない。俺の目的が終えるまでは。

家に帰り著くと母さんが玄関に立っていた。玄関の電気は點いていたからもしやと思ったが、まさかドアを開けた瞬間そこにいるとは。壁にかかった時計を見ると、11時半。さすがにちょっと遅すぎたかもしれない。こんな時間まで外に出てたのを咎められるのかと思ったが、

「お風呂を湧かし直したわ。早くりなさい。汗かいてるでしょ。洗濯するものはちゃんと洗濯機にれといて。じゃ、私は寢るから。おやすみ」

そう言って、母さんは一階の寢室に向かおうとする。

「え、それだけ? 何してたのとか聞かないの?」

予想が外れてびっくりする。こんな時間まで待って、言うことはそれだけ? 怒ってほしいとか怒られたいとかそういうものじゃ決してない。怒られなかったというのが逆に不思議なのだ。

「別に興味ないわ。それに約束してたじゃない。もう子供扱いしないって。自分で言ってたでしょ、もう忘れたの? じゃ、おやすみ」

おやすみなさいお母様とヒカリが挨拶する。

「じゃ、お言葉に甘えてお風呂ろ!」

「……お、おぉ分かった。そうだな、俺は後でいい。ヒカリが先にっていいから」

なんかすごい拍子抜け。中學の時は結構厳しくて、何か悪いことしたらすぐ飯抜きとかあったのに。まあ飯抜きと言ってもそこはやっぱ母さんで、反省してる様子を見せれば食わせてくれたんだけど。

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