《小さなヒカリの語》62ページ目

ヒカリを見ると、いつの間にかいつものらかな表が戻っていた。それを見て俺はほっとする。

「……そうだな。よし、準備も出來たことだしいっちょやるか!」

手馴れた手つきで清掃作業を進める。親戚のみんなが集まりきる前に終わらすのが親族としての役割だ。早めに參來してきてくれた島岡のおばさんや、俺のいとこにあたる敬一郎君が手伝ってくれて、一時間足らずで事を終えることが出來た。あとは顔合わせのため、親戚の人たちが集まるのを待つだけだ。

「先に一回拝んどきましょ」

母さんが線香にチャッカマンで火をつけ、手を合わせることを俺らに促した。ヒカリは母さんからけ取ったチャッカマンを一旦ビニール袋に戻し、俺の橫に並んだ。

「拝み方は知ってるか?」

「うん、おばあちゃんが亡くなった時にお母さんから習ったから」

思わぬ所から俺へのダメージ。ヒカリの言葉にの奧がチクチクと痛んだ。まるで針でも刺さっているみたいに。せりあがってくる気持ちを強引に押さえ込む。今日は父さんの墓參りなんだ。余計なことは一切考えるな。

母さんが南無阿彌陀仏を唱え始めたので、それに続いて俺らも一緒に唱えた。

「……南無阿彌陀仏―なーむーあーみーだーぶー」

いつものセット數を唱え終わると母さんは、

「あとは伝えたいこと、願いたいこと、なんでも自由に拝みなさい」

合掌の後にある毎年恒例の決まり言葉を俺らにかけた。

ヒカリが不思議そうに首を傾げたので俺が教えてやることにする。

「ヒカリは初めてだから俺が教えるよ。基本、願う容は何でもあり。ここで願うことは二十パーセントの確率で葉うんだ。願うことがないなら、願うことがないくらい幸せですって伝える。それが我が家のルールだ」

「二十パーセント?」

「俺基準の割合だけどな。五歳のときから始めて、願ったのが計十回。葉ったのがそのうちの二回。ただ何でもありだから葉ったら大きいぞ」

なくとも俺はそう信じて疑わない。

「二回は何が葉ったの?」

「一回目は友達が百人出來ますように、だ。小一の頃だったと思う。二回目は……」

ここまで言って俺ははっとする。しまった。でも言わないと逆に変なじになるから意を決して言う。

「二回目はヒカリとまた逢えますように、だった」

去年ここで願ったことが俺のとなりで実現してる。

「そう……なんだ。こーちゃんも私と同じこと考えてたんだ。なんか嬉しいな」

……ヒカリも考えてた? 俺と同じ事を? 離れ離れになった後でもか?

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