《小さなヒカリの語》68ページ目

これと言ってヒカリが首元から何かを外す。見ると十字架のネックレス。

「オウムが形されたらこの十字架が震えるの。でも別にこれは持ってなくてもいい。ある程度練してきたら自分の察知能力で反応出來るようになるから」

ヒカリは十字架を首にかけなおす。なんていうかこの世界はよどんで見える。建はそのまま基本空間と変わらないため世紀末の景までとはいかないが、それでも居心地が悪い。紫のもやがかかって、霧?みたいに見える。視界は開けているし、実がないため、く時の障害にはならないががもやもやする。何だろうこの覚。

「今こーちゃんは慣れない覚にし驚いてると思う。この薄紫のもやは実がないといっても、負の分子で構されてるから、元の人間の気持ちがしずつ空気にこぼれだしてるんだ。人の負の、それが今こーちゃんの心を揺りかそうとしてるの」

しずつ呼吸が淺くなっているような気がする。し眠たくなってきたのがその証拠。脳に酸素が行き屆いてない。

「そうだな、あんまり居心地のいいとこじゃないのな」

寢るのには最適かもなと軽口をたたく。そうでもしないとこの気持ち悪さを拭えない。こんなとこでいつもヒカリは戦ってるのかと思うと、すげえなしか言葉が浮かばない。

「他に何かじたことは?」

ヒカリが俺に言う。

「うーん、なんか疲れやすい気がする」

それも基本空間とは違うところだけど、とヒカリは前置きをする。

「あのね、こーちゃんは気づいていないかもしれないけど、この世界は今日の風景じゃないの」

「……どういうことだ? まったく同じにしか見えないんだが」

周りを見渡しても、普通に電柱が建ってるし、川は普通に流れてるし、空気も一応ある。すごく居心地が悪いということ以外には変わったとこは見けられない。

「ここはね、一日前の世界なんだよ。時間軸がしずれていて、今日の基本空間がこの異次元空間の明日になるんだ。もしこーちゃんが基本空間に咲いてるたんぽぽを引っこ抜いたら、明日の異次元空間でもその花が引っこ抜かれてるの。つまり、この世界は実際にあった過去の世界。そして起ったことがまだ起ってないことになってる、ある意味タイムマシーンを現したような世界」

「そうなのか」

よーく見れば雲の量が今日より多い。いつの間にか太が雲に隠れている。ヒカリの説明によれば、これは昨日の風景。昨日か今日に雨でも降っていれば違いが分かりやすいのだが、昨日ここに來たのは墓參りを終え、夜になってからなので晝の風景を知らない。まあ、それはすぐに確かめられるが。

ヒカリに頼んで、もう一度『扉』を開けてもらう。呪文のようなかけ聲の後に大気にひびがる。そのひずみの中に足をれてそのままごとすっぽり抜けきる。ヒカリも後に続く。

出た途端、がくっと膝から崩れ落ちる。そのことに自分が一番驚いた。知らず知らずのうちに張し

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