《小さなヒカリの語》102ページ目
出來たことだ。現に繋いでる俺が言うのは言葉に重みがないだろうけど。
「ううん、三年生までだよ。私はちゃんと覚えてる」
ヒカリのよどみのない訂正に、右手に集中していた意識が頭に戻る。
「そうだったっけ?」
三年生まで手を繋いでたのか俺という驚きと、ヒカリはそんな些細なことまで覚えてるのかという驚きが脳を巡る。
「ほら、そのことで々みんなに茶化されたじゃん。利香とかふざけて新郎新婦の誓いとか言って、無理やりチュウさせようとしたの。それも覚えてないの?」
うーん、言われてみればあったような気もする。でも確証はないから言い切れない。
「俺は良い出來事しか記憶に殘さないからな」
「えー! それ、ほんと?」
まるっきり噓だ。ほんの一部のことは今でも鮮明に覚えているし、そのせいで苦しくなる事だってある。都合の良い解釈をするならば、これは良い思い出を作ってゆこうという意思表明だ。ヒカリに伝わるはずがないが。
「私もそうだよ」
「えっ!?」
もしかして伝わったのか!? いや、でもそれはさすがに……
「私には良い思い出しかないよ。茶化された時だって、怖い犬に追いかけられた時だって、窓ガラス割って先生に怒られた時だって、隣にはいつだってこーちゃんが……いてくれたから」
じーんとが溫かくなった。俺をそんなに頼りにしてくれていたんだと耳たぶも熱くなる。
これを都合よく解釈すると『四ノ瀬ヒカリにはどんな出來事も柊康介が隣にいなければ良い思い出にはならない』になる。……自分のあまりの痛さに吐き気がする。ないない、いくらなんでも都合が良すぎだ。俺死なねぇかな。まぁ、でも、
「俺も自分が忘れたことを誰かが覚えてるってのは強い心の支えになるよ」
ヒカリの言葉に俺も心からの想を述べる。ヒカリはかぁーっと顔を真っ赤にしたが、その心境は俺にも分かった。照れくさいことをまっすぐに言われると恥ずかしいのだ。現に俺もヒカリの発言にまだ顔の赤みが取れない。
「これ食ってみ。マジで上手いから」
「どれどれ……ほんとだ! おーいしいー!」
「ヒカリちょっ、やばいぞ。おばちゃんに睨まれてる」
「ちょっとこーちゃん、これもいけるよ!」
「こ、これは! 貝の旨味が全を引き締めて、しょうがが味のアクセントになっている。一見ミスマッチ
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