《小さなヒカリの語》112ページ目
ういう時、俺は原因を何と思ってきた? ヒカリに何かあった時、まず初めに考えたことは何だ?
「ヒカリは今、どこにいる?」
ただの大きな勘違いかもしれない。ヒカリには本當に用事があって、し多く時間がかかってるだけ。言葉も言い方を間違えただけ。走ったのは早く事を済ませて帰るため。
代わりの理由を列挙してみるが駄目だった。自分に噓はつけない。早まる鼓はすでに結論を出している。ヒカリはここにはいない。じゃあ、いったいどこにいる?
がほぼ反的にテーブルから跳ね起き、続いて椅子が音をたて後ろにずれた。脳が命令を下したと同時にリビングを出ていた。玄関の扉も勢いよく押し開け、外に出る。
きらす、きらす、きらす、積極的に息を切らす。急がなきゃ、走らなきゃ、間に合わないかもしれない。この前みたいにやられていたらと思うとどんどん加速はついていく。
坂道の傾斜のようにどんどん心拍數も上がってゆく。
と、ふと手には何も持ってないことに気づいた。武がなければ加勢しようもない。大きな時間のロスで、焦りともどかしさに心は渦巻く。きびすを返し、急いで家に戻り、玄関のかさ立てにたてかけた弓のケースを思い切り引っこ抜く。
「ヒカリちゃんは學校にいるわ」
玄関を出ようとした時、後ろから聲がした。振り向くとそこには母さんが立っていた。
「康介が自分で決めたことなら私は止めないわ」
「……母さん?」
「今夜はパーティー。予算を考えないで豪華に作りすぎちゃうかもしれないわ。あの子がいないとたぶん食べきれない。だから康介、絶対に、絶対に帰ってきなさいよね。ヒカリちゃんと一緒に。ナイトはお姫様を救うからナイトと言うんだもの」
俺は學校に向かっていた。探す當てがない狀況で、明確にヒカリの場所を教えてくれた母さんの言葉にはに潛む靜かな覚悟が見えた。拠なく言ってるようじゃなかった。もし言ってたことが事実だとしたら、母さんはなぜ知ってるのか。最後にヒカリと別れた俺でさえどこにいるのか分からないのに。いったい母さんは……。
夕が目に飛び込んできた。
なるべく意識しないようにしてたのに、この前それが発してから、オレンジの空に対するが薄い壁一枚の所であふれ出そうになる。あの日もこんな空だった。當てもなく走り回った、いつかの自分の姿に重なって、心も呼吸も腕のふり幅もれる。ヒカリをこのまま見つけられないとしたら、たぶん永遠に乗り越えられなくなる。どんな罪の償いをしたとしても、そういう壁を自分から作ってしまう。二回目は絶対に阻止しないと。そう思うが、最悪の場合を想定して嗚咽がれた。空回る呼吸に、肺が鋭敏な痛みを訴える。けれどそんなのはいいんだ。そんな小さな痛みには構わない。
もっと大きな痛みがこの先に待ってる気がするから。
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