《まちがいなく、僕の青春ラブコメは実況されている》第3章 僕は、普通の夏休みを過ごしたい。6

――視界に火花が散った。

鋭い衝撃を鼻先にじ、思わずその場に膝をつく。

鼻の下に生暖かいを覚え、ってみるとそれはだった。

『卑怯にも三下のひとりが不意打ちナックルパートだ! そして、乙幡は? おっと、鼻から鮮! こうなったら、目には目を、歯には歯を! 向こうが不意打ち狙いなら、乙幡もこのしゃがんだ勢から掟破りの金的攻撃を――』

そんな実況の途中で、男たちは倒れた僕に鋭いキックを浴びせた。

両脇腹に、つま先が食い込んむ。息が止まる。

僕は地面に突っ伏し、亀のようにこまる他なかった。

「――乙幡くん!」

新垣さんの悲鳴のようなびが頭上に聞こえた。

が、その間も第二波、第三波のキックが打ち込まれる。

キックが決まる度、胃から酸っぱいものがこみ上げる。涙も自然と滲み出る。

「やめてください、つきあいますから! だからお願い、もうやめて‼」

一際、大きく新垣さんがぶと、男たちはようやく僕から離れた。

見上げると、アロハ男たちは踵を返し、再び新垣さんに近づいていく。

「ようやくつきあってくれる気になったかなぁ。最初からそれぐらい素直にしてりゃ――」

男のひとりが無理やり新垣さんの手を摑む。

「――やめて」

新垣さんが泣きそうな表で反駁した、その時だった。

「その手を離せ」

後方から誰か別の男の聲がした。

ようやく誰かが助けが來てくれたんだと安堵し振り返る。

剎那、僕は絶句した。

そこにいたのが、赤坂・・だったからだ。

――なぜ、あの赤坂が……ここに?

次の瞬間、記憶がいっきにフラッシュバックする。

僕が突然廊下で倒れたあの日、失われていた記憶だ。

廊下に大量のプリントをばらまいてしまった直後、気を失う直前、僕は赤坂・・を見たんだ!

そうだった。

僕は赤坂を見て、そのショックで気を失ったんだ。

にしても、なんてことだ!

アイツと一緒の高校だったなんて……。

々な、記憶が、一気に駆け巡る。おまけに、鼻も止まりそうにない。

でも、今はまず新垣さんを――。

僕がそう思い直した頃には、すでに赤坂の拳が男のひとりを捉えていた。

男は派手に吹っ飛び、その場に腰砕けになった。

「あんたもやる? 相手になってやってもいいけど」

赤坂はその場で、ボクシングのファイティングポーズのような格好をした。

それを見て、もうひとりの男は焦りの表を浮かべた。

「クソ! てめえ、覚えてろよ!」

男はわかりやすい捨てゼリフを吐き、倒れた男を引きずるようにしてそそくさと去っていった。

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