《まちがいなく、僕の青春ラブコメは実況されている》第3章 僕は、普通の夏休みを過ごしたい。9
「……聞こえてるよ、伊達さん」
僕は宙空の暗闇に向け、小さく返した。
『ようやく、私の聲が乙幡剛に屆いたようであります。実況というのは、虛しいもので聞く人がいなくなれば、それはもはや実況でなく、ただの寂しい獨り言と化してしまうわけであります。つまり、聞く人あっての実況。オーディエンスなくして実況なし。したがいまして、現在の私の実況の唯一のオーディエンスである乙幡剛のピンチは、私、伊達のピンチとも同義なわけであります。乙幡剛が私の実況を聞いてくれなければ、私の実況はただの獨り言に、さらに言えば、私の霊の存在そのものがなかったことになってしまうわけであります。その上で、先ほど、私、乙幡剛のこんな心の聲を聞いてしまいまいた。「一生、められる定め」といった吐も聞きました。たしかに、なかなかハードな話であります。自らにトラウマを作った男と再會し、あまつさえ想い人もその敵に取られてしまいそうな展開。想い人を救うヒーローにもなれず、敵の活躍を演出する舞臺裝置と化してしまった。ここまでくると、もはや乙幡自が語るように「逃れられない定め」なのかもしれません……。しかし、そんな定めに、あるいは運命にあったとしても、それを拒み、抗い、起した人々を私は知っているのであります。それは言わずもがな、私の短いアナウンサー人生のなかで実況してきた、數々のアスリート、プロフェッショナルたちであります。運命なんて、クソくらえ! 未來は自分で切り開く! 彼らは、とてつもない逆境を跳ね返し、その先に勝利を摑んだ。あるいは負けたとしても、彼らの瞳にはなくとも後悔はなかったわけであります! たとえば、あるレスラーはそのキャリアの絶頂期にガン宣告をけた。家族が、同僚のレスラーが、友人が、誰もが彼に引退を勧めた。しかし、彼は首を縦にふらなかった。手をけ、地獄のようなリハビリの日々を選んだ。なぜか? どんな無様でもいい、勝てなくたっていい、大好きなプロレスを一日でも長く続けていたい。ただその一心で、彼は試練に立ち向かった! 果たして一年半後、彼は絶対不可能と言われたリングに帰ってきた。同僚のレスラーも観客も大聲援と涙で迎えた。復帰戦での勝利はならなかったが、彼は病気に、自分に、確かに打ち勝ったのであります! また、あるレーサーは、生まれながらにして左半に先天的な麻痺を持っていた。だが、彼には明確な夢があった。レーサーになり、F1のサーキットに立つ。しかし、そもそもレーサーどころかをかす仕事に就くこと自無理だろうと醫者は言った。親も、親戚も、學校の先生も、大人たちは皆、遠回しに彼に夢をあきらめさせようとした。だが、彼は決してあきらめなかった。大人たちの忠告を無視し、夢を持ち続けた。そして十五年後。彼は見事にF1のサーキットに立った。そればかりか、チャンピオンにまで登りつめた! あるピッチャーは元々、右利きの右投げで、小學校の時からエースだった。しかし、通事故に遭い、右腕でのピンチングができなくなった。絶していた彼に父親は言った。右で投げられないなら、左で投げればいいじゃないか。その言葉に彼は起した。元々の利き手じゃない左腕によるピッチングを死に狂いで磨いた。やがて、彼は本格左腕として甲子園を席巻し、プロ野球、そしてメジャーのマウンドにまで立った! 彼らはみな、ともすれば心が折れるほどの冷徹で殘酷な運命に、宿命に必死で抗ったんだ!』
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……いいよ、伊達さん。
今はそんな話、聞きたくないよ。
所詮、一流のアスリートやプロたちの功譚じゃないか。その裏で負けていった何千何萬の敗者の気持ちなんて、いや僕の気持ちなんて、きっと――
『――おい、剛! 一度も抗いもせず腐ってんじゃねぇ――!』
初めて聞く、伊達さんの実況でない、明らかな怒聲に僕は虛をつかれた。
『……失禮、取りしました。ですが、それでも私は問いたいわけであります! 乙幡剛に問いただしたいわけであります‼ 君が言うところの定めや運命に対し、一度でも抗ったことがあるのかということであります! 一度でも挑んだことがあるのかということであります!! 確かに、嫌なことからは逃げたい。逃げるが勝ちだという考え方だってある。時には、その方が賢い場合さえあるだろう。だが、剛よ! このまま何もせず、またヤツにめられるのを恐々としてただ待つのか? 元めっ子での腐った野郎だと知りながら、新垣さんとヤツが付き合うかもしれないのを、ただ指をくわえて見ているのか? ふざけんなとか、この野郎とか、ちきしょうとか、今に見てろとか、そんなが微塵も心に浮かんでこないのか⁉ このまま逃げてるだけで本當にいいのかー! どうなんだ! 乙幡剛‼』
ひねくれ領主の幸福譚 性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!【書籍化】
【書籍第2巻が2022年8月25日にオーバーラップノベルス様より発売予定です!】 ノエイン・アールクヴィストは性格がひねくれている。 大貴族の妾の子として生まれ、成人するとともに辺境の領地と底辺爵位を押しつけられて実家との縁を切られた彼は考えた。 あの親のように卑劣で空虛な人間にはなりたくないと。 たくさんの愛に包まれた幸福な人生を送りたいと。 そのためにノエインは決意した。誰もが褒め稱える理想的な領主貴族になろうと。 領民から愛されるために、領民を愛し慈しもう。 隣人領主たちと友好を結び、共存共栄を目指し、自身の幸福のために利用しよう。 これは少し歪んだ気質を持つ青年が、自分なりに幸福になろうと人生を進む物語。 ※カクヨム様にも掲載させていただいています
8 13512ハロンの閑話道【書籍化】
拙作「12ハロンのチクショー道」の閑話集です。 本編をお読みで無い方はそちらからお読みいただけると幸いです。 完全に蛇足の話も含むので本編とは別けての投稿です。 2021/07/05 本編「12ハロンのチクショー道」が書籍化決定しました。詳細は追ってご報告いたします。 2021/12/12 本編が12/25日に書籍発売いたします。予約始まっているのでよかったら僕に馬券代恵んでください(切実) 公式hp→ https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=9784824000668&vid=&cat=NVL&swrd=
8 141【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔術師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】
※書籍化決定しました!! 詳細は活動報告をご覧ください! ※1巻発売中です。2巻 9/25(土)に発売です。 ※第三章開始しました。 魔法は詠唱するか、スクロールと呼ばれる羊皮紙の巻物を使って発動するしかない。 ギルドにはスクロールを生産する寫本係がある。スティーヴンも寫本係の一人だ。 マップしか生産させてもらえない彼はいつかスクロール係になることを夢見て毎夜遅く、スクロールを盜み見てユニークスキル〈記録と読み取り〉を使い記憶していった。 5年マップを作らされた。 あるとき突然、貴族出身の新しいマップ係が現れ、スティーヴンは無能としてギルド『グーニー』を解雇される。 しかし、『グーニー』の人間は知らなかった。 スティーヴンのマップが異常なほど正確なことを。 それがどれだけ『グーニー』に影響を與えていたかということを。 さらに長年ユニークスキルで記憶してきたスクロールが目覚め、主人公と周囲の人々を救っていく。
8 171旋風のルスト 〜逆境少女の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方國境戦記〜
【一二三書房WEB小説大賞金賞受賞】《新・旋風のルスト:公開中です!》 <あらすじ>────────────────── 『私は家畜にはならない。たとえ飢えて痩せ衰えても、自らの意思で荒野を歩む狼の生き方を摑み取る!』 ■17歳の銀髪・碧眼の美少女ルストは重い病の母の治療費のために傭兵として懸命に働いていた。屈強な男たちと肩を並べて戦うが、女性としても小柄であり、実績も無く、名前も売れていないルストは傭兵として仕事を得るのも困難を極めていた。 だが、諦めない前向きな心を持つルストは、ついに未來へとつながる大きなチャンスを摑む。 『小隊長を任されたエルスト・ターナーです。よろしくお願い致します!』 ■そんなルストは、女の子故に腕っぷしや武力では屈強な男たちには敵わない。だが優れた洞察力と包容力と指導力、そして精霊科學『精術』を武器に困難な事態を次々に打ち破り、人々のために確かな明日へと繋がる未來を切り開いていく。 『みなさん! これは困難ではありません! 千載一遇のチャンスです!』 ■気高さに溢れた美少女傭兵が、精霊科學の殘る悠久の大地フェンデリオル國で砂漠の大帝國と戦い、人々を幸せへと導く! 孤獨な道を歩んでいた一人の少女が、傭兵となり救國の英雄となり、幸せの絆を取り戻すロマン溢れるサクセスストーリー! <⇩お知らせ>────────────────── 【一二三書房WEB小説大賞金賞受賞いたしました、ありがとうございます! これに伴い書籍化されます!】 【新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの國際諜報戦記―】 2月26日開始しました! ──────────────── ただいま、ノベプラ・カクヨム・ノベリズムでも掲載中です
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主人公、黒崎仁は元勇者だった しかし今はいじめられっ子 そんなある日突然、教室に魔法陣が現れた そして黒崎仁はまたもや勇者になって世界を救うことになってしまった やっと移動してきました!
8 56ゆびきたす
『私達は何処に心を置き去りにしていくのだろう』 高校生活二年目の夏休みの手前、私は先輩に誘われてレズビアン相手の援助交際サイトに書き込んだ。そこで初めて出會った相手は、私と同じ學校の女生徒だった。心の居場所を知らない私達の不器用な戀の話。
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