《まちがいなく、僕の青春ラブコメは実況されている》第4章 僕は、強くなりたい。12
若虎ヤングタイガー計畫36日目(最終日)
『全國1000萬の伊達一郎実況ファンのみなさま、おはようございます! さあ、泣いても笑っても本日が、乙幡剛 若虎ヤングタイガー計畫最終日となるわけであります。今日が乙幡の夏休み最終日ということもありまして、本日をもって乙幡剛は虎のを巣立ち、元の學び舎に帰っていくわけであります。振り返れば、すでに1ヶ月以上。正確には、じつに36日間。かつての乙幡にとっては、想像を絶するような日々をくぐり抜けてきたわけであります。來る日も來る日も、全の筋を酷使し、滝のような汗をかき、もがき、苦しみ、歯を食いしばり、時に涙し、今日までの日々を送ってまいりました。決して平坦な道でも、楽な道でもありませんでした。計畫を立案し、自ら実況し続けてきた私伊達自、正直、乙幡がここまでやるとは思いもしませんでした。しかし、當初の予想を鮮やかに裏切り、想像を遙かに超え、乙幡は今日という日を迎えたわけであります。本日の天気予報は、快晴。まるで乙幡の卒業を前祝いするかのような晴れやかな予報が出ております。ただ、乙幡自は至って冷靜で、いつもと変わらぬ朝のルーティンを黙々とこなしております。変わらず、5時前には起床。いつものプロテイン飲料とバナナという軽めの朝食を済ますと、たった今、迷いなく玄関を出ました。まだ、日も昇らない暗闇の中、今日も乙幡は、靜かに走り始めるわけであります。その橫顔には、かつての怠惰な、臆病な、弱気な、太った青白い年という面影は微塵もありません。その表には、何かをし遂げてきたという自負のようなものと、毎朝走った分だけ蓄積された日焼けが刻まれているわけであります。そして、それは「トレーニングは噓をつかない」あるいはもっとシンプルに「人は変われるんだ」ということを、端的に現しているかのようであります。今、ゆっくりとしい朝日が登って參りました。ドーンパープルのアンニュイな世界観の中で、乙幡剛が虎のへのラストランを駆けていきます! さあ今日も、がんばれ、剛! 負けるな、剛‼』
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『――さあ、ここ斬日本プロレス若虎道場には、若手選手たちの大音量の掛け聲がサラウンドで響き渡っているぞ! 「イチ、ニー、サン、シー」と一定間隔、かつ高速で刻まれるその掛け聲。それに合わせ、選手たちの汗が飛び散り、床が微振を繰り返しているわけであります! 斬日伝統のヒンズースクワットの高速版、斬日式高速・・スクワットが今まさにここで繰り広げられているわけであります! 車座になり、みながその場で高速でかがみ、立ち上がるという至ってシンプルなきを重ねるその中心には、斬日の赤鬼こと本山大鉄が竹刀を持ち、睨みを利かせている狀況。そして、そんなピリついた空間のただ中に、我らが乙幡剛もちゃっかり參加しているわけであります。裏を返せば、選手たちとまったく同じメニューをこなせるまでに長したわけであります。この進歩は、奇跡と言ってもいいのではないでしょうか? それまでは、ごく普通の高校生、いや運に関する限りは平均をはるかに下回る高校生であった乙幡剛が1ヶ月以上の道場生活を経て、なくとも若虎に混じりトレーニングができるまでに長したことは、本當に慨深い! しかも、この高速スクワット、なんとすでに重ねること1セット100回の5セット目に突しているのであります! つまり、総回數では400回を超えているわけであります。大げさな話でも何でもなく、選手たち、そして乙幡剛の足元には汗の水たまりが完しようとしています。乙幡にとっては異次元の500回を目指す高速スクワットの旅路! さあ、いよいよ殘り20回を切りました! 10を切って……さあ、キュージューロク、キュージューシチ、キュージューハチ、キュージューキュー、ヒャ――ク‼ ついに、やりました! やり遂げました! 乙幡剛、斬日スクワットの最終奧義とも言える、斬日式高速スクワット500回をギリギリ最終日に制覇しました――!』
――計畫36日目(最終日)、トレーニング果
・高速ヒンズースクワット:500回(100回×5セット)
・プッシュアップ:150回(30回×5セット)
・腹筋:150回(30回×5セット)
   ・ロープ登り:10回 
・ロードワーク:30キロ(ランニング)
・縄跳び:1000回(200回×5セット)
・ジャンピングスクワット:50回(50回×1セット)
トレーニング後、いつものように夕食をご馳走になり帰ろうとすると、選手たちに呼び止められた。
振り返ると、そこには大鉄さん含め選手が総出で立っていた……。
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