《俺の高校生活がラブコメ的な狀況になっている件》第58話

「で、この後どうすんだ?」

「んー、ユキちゃんは何したい?」

「そうだねぇ……お兄ちゃんは何したい?」

「……おい、この質問さっきからループしてるぞ」

フードコートで腹を満たした俺たちはアミューズメント施設を歩いていた。

施設にはボーリングだったり、ゲーセン、カラオケなどいろいろな娯楽がある。

でも、正直今はそんな気分ではない。

周りの人はキャッキャウフフ騒ぎながら楽しんでいるが、俺は別に遊びに來たってわけじゃない。連れてこられたんだ。無理やりね!

今頃は家でゴロゴロしていたであろうこの時間帯。

俺の唯一の幸せだった晝寢を奪った六花とユキ。

……許せない。許せない。許せないのデス!

ここはもう責任をとってもらうしかない!

「今日は……遊び倒すぞ!」

「え?」

「はい?帰らないの?」

六花とユキがそれぞれ頭の上にはてなマークを浮かべた。

いやいや、なんでお前らがはてなマークを浮かべるんだよ!お前らは遊びたくて來たんじゃないのか?

まぁ、ユキの言う通り帰りたい。でもね、今から帰ったって晝寢する時間ないじゃん!なんならもう夜寢になっちゃうよ?

「俺……こういうところ來たことないからさ……」

六花たちの疑問に答えるように理由を言ってみたものの、悲しくなった。

ぼっちだった故に俺にはボーリングとかカラオケは本當に縁がなかった。だから今日が初になるんだけど……ねぇ、六花さんとユキさん、そんな悲しそうな目で見ないで!俺の悲しさが本當に目から明のとなって滲み出てきちゃうよ!

「そ、そうなんだね!実はわ、私も初めてなんだ!アハハハ」

「き、奇遇だね!ウチも初だよ!アハハハ」

気を使ってくれたのか、とてもとても分かりやすい噓をついてくれる六花とユキ。

笑った表が若干引きつっているのもその噓という証拠。

それに乾いた笑い聲。

……なんかゴメン!気を使わせてしまって本當にごめんなさい!

なぜか罪悪が湧いてきた俺はそのまま渋々、念願だったけど思っていたのとちょっと違う初ボーリングをすることにした。

◆❖◇◇❖◆

「今日は楽しかったね!」

「お兄ちゃん!ウチ、ボーリング上手だったでしょ!」

「ああ、そうだな」

アミューズメント施設を出て家に帰る途中、俺たちは喋りながら歩いていた。

容はもちろん今日の楽しかったこと。六花とユキは結構、楽しんでいたので話もその分盛り上がっている。

俺は……一応、楽しんだが、普段運していないせいか、ボーリングをした後から右肩が痛い。これだと明日は筋痛になっているかもしれない。

そんなことを考えている時、ふとユキが俺と六花の前に出て、こちらに振り返った。

俺と六花は同時に足を止める。

「來年も三人で行こうね!」

ユキは無邪気な笑顔を見せた。

月明かりに照らされたユキの笑顔はとても優しそうで俺はつい見惚れてしまう。

六花も同じだったのかユキの顔を見たまま、微だにしなかった。

「ねぇ、どうしたの?」

「ああ、いやなんでもない」

「ううん、そうだね!來年もまた」

ユキに聲をかけられて我に返った俺と六花はそれぞれ返事をした。

その返事を聞いてユキはもう一度笑顔を見せると、そのまま前を向いて歩き出した。

俺と六花もそれにつられるように足をかす。

ユキの背中を見て、俺はなんだか切ない気持ちになった。

……來年なんて來るのだろうか?

六花との來年は來るかもしれないが、果たしてユキとの來年はどうなるのか全く分からない。

今は一緒に暮らしているが、どのような形で別れることがあるかもしれない。

それもユキの父親が連れ戻しに來たりとか。

その辺はまだ分からないし、ユキの言う限りではないと思うが、この三人の來年は……。

「しょーくん……大丈夫だよ」

「え?」

六花が俺の手を握った。

俺は一瞬なにが大丈夫なのか分からなかったが……そうだった。六花は俺の心を読むのが得意だったな。

六花は自分なりに勵ましてくれたのかもしれない。

俺は今日のことで気づいたことが一つある。

今まではうるさいとかウザいとか思っていたけど…………俺は今のこの三人との生活が好きなんだ。今までは學校に行ってもぼっちで構ってくれたのは親ぐらい。でも、今は違う。唯一構ってくれた親がいなくなった代わりに六花、ユキがいる。學校でも二人以外に月がいる。この関係を続けていきたい。ずっと、一生に。

だから、來年もまた三人で行こうと俺は強く決心した。

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