《俺の高校生活がラブコメ的な狀況になっている件》第81話
部室から飛び出してすぐのことだった。
制服の上著ポケットにれていたスマホがいきなり震えだし、けたたましい著信音が鳴り響く。
――誰なんだ?
そう思いながら、立ち止まり、ポケットの中に手を突っ込む。
正直なところ、俺は友だちがあまりいない……ということはお分かりだと思うが、それと比例して電話が鳴ることもほとんどない。鳴ったと思えば、間違い電話とか宗教の勧にイタズラ電話ぐらいだ。
今回の電話もそんなところだろう。
一旦取り出しかけたスマホを手から離し、再びポケットの中にれ、再び廊下を歩き出す。
十歩ぐらい歩いたところで鳴り響いていた著信音はパッと靜かになり、いつもの放課後の靜寂さが戻る。
夕日が廊下の窓から差し込み、グラウンドから野球部とサッカー部の掛け聲が微かに聞こえてくる。
――このままだと俺は……。
廊下を歩きながら、考え込もうとしている時だった。
またポケットの中にあるスマホから著信音が鳴り響いた。
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「しつこいな……」
ぼそっとつぶやきながらも無視しようかと思ったが、何回も電話がかかってくる。
……いい加減、我慢の限界である。
し暴にポケットからスマホを取り出す。
宗教の勧か?それとも間違い電話?いや、イタズラ電話か?
どちらにせよ俺は一喝してやる。
でないと、この怒りが収まらん!
「もしもし」
『もしもし、私なんだけど……』
電話の向こうはどうやらのようだ。
私なんだけどと言われても誰なのかさっぱり分からない。
「……どちら様でしょうか?」
『だから、私よ私!』
さっきから私、私って、もしかして私っていう変わった名前なのだろうか。それとも新手の詐欺か?オレオレ詐欺ならぬワタシワタシ詐欺的な。
「……間違い電話だと思いますよ。もう一度ちゃんと電話番號を見て、かけ直してください」
一喝してやろうかと思ったが、あまり関わりたくない。
ここは間違い電話だろうが、詐欺だろうが、一番無難な方法を取るべきだろう。
俺は相手の返事も聞かず、通話を切った。
これでかかってくることはない。
と、確信しかけたが…………切ったすぐそばで再び著信音が鳴る。
「……あの、ですから……」
『私だって言ってるでしょ!六花よ!六花!なんで聲だけで分からないのかな!?』
思いっきり怒鳴られた。
しかも正が六花だって?
そんなの……
「分かるわけないだろ!そもそもなんで非通知なんだよ!」
誰だって分かるわけないだろ!
聲だけで相手が分かれば、オレオレ詐欺は完全になくなる…というか、そもそもない。
怒鳴られるのは理不盡ではないだろうか。
『スマホ家に忘れてきて公衆電話からかけてるのよ。それよりそんなことはもういい。今すぐニコニコ公園に來なさい』
「今すぐ?今すぐは無理だよ」
飛び出して逃げてきたようなものだが、部室には月がいる。置いて行くにはちょっと可哀想だ。
せめて、一言だけ伝えてからでいいだろう。
『なんで?絶対に來ないと殺すからね』
「殺す?!怖いよ!それはもう脅迫じゃねぇか!」
『それとニコニコ公園に行くことは誰にも言わないこと。黙ってこっちに來なさい。いいわね?』
そう六花は言うと、俺の返事も聞かず、一方的に通話を切った。
黙って來いと言われた以上、月には何も伝えることはできない。
もし、伝えたことがバレれば俺は六花にどんな酷いことをされるのだろうか……。
「……はぁ」
重たいため息が自然と口から出た。
廊下は先ほどと変わらず、夕日が窓から差し込み、明るい。
グラウンドからは野球部とサッカー部の掛け聲が引き続き、微かに聞こえる。
あまり変わっていない景。
でも、俺の中はだいぶ変わり、憂鬱さが何倍にも増した。
「はぁ……行きたくないなぁ……」
そんな獨り言が誰もいない廊下を響き渡らせ、俺は靴箱へと手ぶらのまま向かった。
カバンとかその他の荷は全て部室に置いてある。
取りに行けば、それこそ月が「もう帰るの?」とか「なら僕も一緒に帰る!」とか言い出し兼ねない。
「……何をされるのやら……」
久々に話したと思えば、ニコニコ公園に來いとか言うし……もしかして、そこで俺を痛めつけるとかされるのだろか。
そう考えただけで暑くもないのに背中から汗が吹き出してくる。
もう嫌だ。
普通の日常に戻りたい……。
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