樹ちゃんが僕らのパーティーを抜けた後、僕らは10層のボス部屋の出口の扉を通って、次の部屋に進んだ。

するとそこには次の層に向かう階段のほかに帰還専用のポータルと言うものがあった。

エミリア王曰く、帰りはこれでダンジョンり口まで転移することが出來るようだ。

しかし、その逆にダンジョンのり口から10層に転移することは出來ないらしい。

そのポータルを使って、ダンジョンのり口に転移すると直ぐに馬車に乗り込み宿に帰る。

あぁ～悔しい。

なんであの戦いで負けてしまったのか……後悔が僕を襲う。

しかし、そこでふと気が付いた。

悔しい？それは確かにそうかもしれない。

あそこまで全力でやって、実際に勝ち手前までは行ったのに、自分の油斷で負けたようなだったからな。

全力…………。なんで僕はあそこまで頑張ったんだ？

確かに樹ちゃんは勇義を嫌がってた。

だから僕は普段から勇義を樹ちゃんから遠ざけるようにしていた。それは分かる。

だが、何も勇義と一緒に居たからって死ぬわけじゃない。

何度も言っているが、勇義自は悪い奴ではない。思い込みは激しいが基本的に勇義から見て善人の人が嫌がるような事をしようとはしない。

樹ちゃんの事を好きで相思相と思い込んではいるようだが、樹ちゃんが本気で拒否すれば、無理矢理何かをするということはないだろう。

そして、勇義は職業勇者でクラスで一番強いから、戦闘でも安心だ。神面に問題があるが樹ちゃんがフォローするなら、ある程度は問題ないだろう。

つまり、樹ちゃんの命に危険があるわけではなく、樹ちゃんがし嫌な思いをするだけなんだ。

なのに僕はあんなに全力で戦って、火の玉を浴びて大火傷して気絶、挙げ句には勇義にみっともなくすがりついて懇願した。

基本的に嫌な事がキライな僕が何故、凄く嫌で辛い思いをしたのに頑張れたんだ？

もしかして…………、樹ちゃんではなく僕自の気持ちなのか？

あぁ～…………なるほど。そうゆうことか。

つまり、僕は樹ちゃんの事を本當に好きだったんだろう。

たしかに、前から異としては意識はしていた。

だが、あくまで僕に友達が居なくて抗がないだけだったり、必要以上に樹ちゃんが思わせ振りな事をしてくるから、ついトギマギしてしまっているだけだと思ってた。

だから、これは心何かではなく、ただの勘違いだと、そう自分に言い聞かせていたのかもしれない。

だが、今回のことで分かった。樹ちゃんが嫌な思いをしているのが嫌で、勇義に樹ちゃんを取られたのが悔しい。

これは僕が樹ちゃんに心をいだいている証拠だろう。

しかし、今さら樹ちゃんにしているという気持ちを理解して余計に後悔が生まれる。

僕は、自分の好きな人すら守れないのか…………。

思い悩んでいるうちに宿舎に到著した。

今から8,9層辺りで手にれた魔を使った料理を作ってもらうみたいで皆は盛り上がっているが、そんな気分ではない。

すると、目の前にいる沙耶さんが聲を掛けてきた。

「気を取り直してご飯でも食べようよ。」

沙耶さんは僕の分のご飯も持ってきてくれたみたいだ。

「あぁ～、ありがとう。」

「勇義君が結局は勝ったけど、どっちが勝ってもおかしくない試合だったよ？そう落ち込まないでよ。」

沙耶さんは勵ましてくれるようだが、それすらも今の僕には辛いだけにじる。

「ごめん沙耶さん。ちょっと一人で々心の整理をしたいんだ。僕は部屋に帰るよ。」

そう言ってご飯を手に持ち自室に戻る。

扉を開けるとそこには見知ったメイドさんがいた。

「お帰りなさいませ。月様。」