元々、人の顔を覚えるのが得意な暁は、數日で大の社員の顔を把握していた。もちろんどこの誰だがはわからないが、見た顔だと認識出來る。

ところが毎日見たことのないがひとり通るのだ。化粧はバッチリしているのだが、人だったり可かったり雰囲気が全く違う。長はの平均くらいだと思う。

最初は、別人だと思っていた。だが、あることに気づいた。そのは、毎日鞄も違うものを持っているが、スマホのカバーが同じだったのだ。手に持っていたり、鞄にしまうところだったり、見えたのは一瞬だが間違いなく同じだ。

そして、決定的だったのが靴だ。確実に厚底を履いている。実際の長より10cm以上高くなっているはずだ。

長を小さくして、化粧を取ったところを想像する。

おそらく、暁の予想は間違っていない…

そのことに気づいた翌日、気合をれて定時にエントランスで待ち構えた。

毎日雰囲気を変えている。今日は、どんなタイプに変しているのだろう。楽しみで仕方ない。どれが本當の彼なのだろうか。

今日こそ逃さない…

定時になり、いつもより足取り軽く最上階から下りて來た。

彼は退社ラッシュのいつも後半だ。いつものベンチに座り待つ。

いつも通り、たくさんの社員が退社していく。ここ數日で、暁には頭を下げても聲を出して挨拶はしない、暗黙のルールが出來ていた。賑やかなはずのエントランスは、靜かで人の足音だけが響いている。事を知らない人が見たら、異様な風景だ。

そして、數分後…

今日は、清楚系のワンピースを著ている。だが、間違いない彼だ。さあ、どうやって聲を掛けるかな。

見ていると、都合のいい事に彼はスマホを手に人波を避け、暁とは反対の端に寄り、何やら忙しそうに手をかしている。

機嫌がいいのか薄っすら笑みまで浮かべて…

何を見て機嫌がいいのか気になる。

彼は余程何かに必死なのか、全くく様子なくスマホを弄っている。