《俺を嫉妬させるなんていい度だ〜曹司からの過度な溺〜》俺様曹司様【1】
結局、芹の拒否はけれられず、會場から連れ出された。
満足顔の暁と不貞腐れている芹は、ホテルに車を取りに戻った駿を待つ。抵抗を諦めた芹は、コスプレから私服に著替えた。
「芹、何か食べたいものはあるか?」
「別に…」
「どこか行きたいところは?」
「帰りたい…」
「卻下」
俺様な暁と頑なな芹は、ずっとこの調子だ。いつもクールで恐いイメージの暁が、芹の前だと何を言われても苛つくことなく、執著している。ただ、目の奧はがギラギラと覗いている。
俺様曹司は興味がないが、ツンデレを発されると芹は弱い。ふたりの駆け引きはどちらに軍配があがるのか…
「おまたせしました」
高級車を運転した駿が會場の裏に車を止めた。
「芹、乗って」
暁が後部座席を開け、芹をエスコートする。
「は、はい」
抵抗を諦め乗り込む芹だが、エスコートされて不覚にもキュンとしてしまった。些細なことなのだが、乙ゲームでのキュンポイントを実際に再現されたようだ。
この時の暁は、エスコートというよりは逃げられまいとしての行だ。
駿も、運転席で驚き固まっていた。普段の暁では考えられない気の利いた行を目の當たりにした。
芹がエントランスで転けてから、信じられないことばかりだ。
「どちらに向かいましょうか?」
「俺のマンション」
「え"…」
「なんだ?どこか行きたいのか?」
「家はちょっと…」
「何を心配している。すぐに取って食ったりはしない」
「暁、お前…不用だな…プッ」
「マンションなら、人目を気にせず食事できるだろう?」
「人目を気にせずって、余計に警戒するだろう?宮さん、暁のマンションは頼めばシェフが來てくれて、自宅に居ながらコース料理が食べれるんですよ」
「…リアル廉くんの世界…」
「芹はなんでもゲームと比べるんだな」
「だって…現実離れしすぎて、リアルには思えない…新城社長の覚が一般人とかけ離れ過ぎてるんです」
「暁だ」
「はあ?」
「新城社長って、他人行儀だろ?」
「他人です」
出會いが出會いなだけに、しゃべり方は砕けてはいるが、呼び方は社長のままだ。
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